FATE【BL】
第46話 5頁
「お前に治してもらって、水帝国を去った日から・・・」
ラーカインの最初の台詞を聞き、周りにいる水帝国の貴族らが驚きを隠さずに、騒いだ。
すると、ワーヤス大将は周りに視線を送り、「静かにしなさい」という意味の視線である。その視線を見た瞬間、国賓室は再び沈黙に戻った。
案外ではない。レイサック以外、水帝国の中でラーカインの病気を知っている者は、ワーヤス大将だけであった。
バーナッドでさえラーカインが倒れたことを知ったのは、炎王が眠りから覚めた後であった。新しい城の移動、戦後の業務、力の回復、風帝国とのやりとり、アルタイルと暮らす日々。それらによって、バーナッドは他のことを考える暇がなかった。
ラーカインがいきなりレイサックと一緒に風土殿に現れてから、およそ一月が経った。土王は信じがたい報告を受けた。炎帝国で反乱が起こった。ルースという名前を聞いた時に、昔の悪夢が浮かんできた。それに、反逆者の中でフェガー大将が含まれている。
あり得ない・・・
フェガー大将の経歴はほとんど謎であった。ラーカインは炎王になった時、無理矢理にフェガーを推薦し、大将にした。
ラーカインが紹介した時に、印象に残ったのは、言葉が少なかった。また、見た目で判断すると、もっと若いかと思えば、年齢はワーヤスとフォアナックスより上で、ゲレル大将とそんなに離れていない。
それに、軍に入っていないものの、推薦されてから短期間で軍の試験を全て合格した。
最初から怪しかった・・・
それでも、ラーカインはフェガーを側近として任命した。炎王は、自分を刺す剣を置く人柄ではない。それはきっと意味があると、バーナッドがずっと思っていた。これまでラーカインから何の説明もなかった。バーナッドも何も聞かないことにした。
だから、報告を聞き、土王は『あり得ない』と思った。
また、報告を受けた時に、もう鳳凰殿が既に反逆者に乗っ取られた。バーナッドは、東の城に逃げたラーカインを追い、久しぶりにラーカインと再会し、倒れたことを知った。しかし、フェガー大将の話になると、ラーカインの反応は一言だけであった。
「裏切り者は全員斬る！それだけだ」
かなり怒っているとも思えるが、ラーカインの顔から怒りを感じなかった。信じた側近に裏切れ、城から追放され、王の座まで乗っ取られた。冷静にいられる訳がない。
ラーカインは語り続ける。炎帝国に戻った時、鳳凰殿がルースの手に入った。力が完全に戻っていない身体では、この戦に勝てないと思った。彼に忠実している十数人の兵と共に、東の城へと逃げた。
「この俺が逃げなければならんとは。初めて味わった敗北だ。だから、何百倍、何千倍も復讐してやると思った」
戦場で一度も逃げたことがなかった炎王。一つ一つの言葉から憎しみと怒りが、聞いた者の心に沁みる。
ラーカインは、自分が東の城に着いたら、バーナッドが訪ねてきた。ここまで話すと、炎王は親友に向かって、告げる。
「バス、その辺の話お前が教えてやれ」
バーナッドは頷き、ラーカインと合流してからのことを話す。
レイサックが反乱のことを知る前の十日間。思った通り、ルースはすぐに全力で軍を使わなかった。彼は、炎の魂の解放を先に済ませたかったからだ。また、炎帝国の貴族を説得する為の時間もかかる。
他帝国の為、バーナッドは表に出られない。裏にフォアナックス大将、副大将ら、そして、何十人程度の高級兵を、炎帝国に潜り込ませた。それで、なんとか抵抗出来ていた。
ルースが炎の魂を解放した力を感じ、これから本番の攻撃が始まると考えた。
様々な作戦を相談した結果、ラーカインはカリナ姫の葬儀の前に、早く全てを終わらせたいと決め、たった独りで鳳凰殿に忍び込んだ。
「忍び込みについての詳しいことは、私もラークから聞きたいです。私の方は、ラークが鳳凰殿に入って、いくら待っても戻りませぬ。嫌な予感がしました。
その時に、若水王、そなたにルースの手紙が届いたと知って、ラークが捕まえられたと思いました。でないと、ルースは大胆なことをせぬ。また、ルース本人も私の前に現れ、ラークのことを教えました」
バーナッドはレイサックを見ながら、語った。
ここまで静かに話を聞いてきたレイサックは、質問を言い出す。
「待って。どうやって手紙のことを知った？」
手紙のことは水帝国で起こったこと。なぜバーナッドがそれについて知ったのか？
バーナッドは話を止まり、何も答えなかった。すると、アルタイルは代わりに答える。
「僕からだ、ロス」
＝＝9月23日更新＝＝
「午前4時に再更新」
途中でタイムラインが間違えて、書き直しました。申し訳ございませんでしたー月神紫苑
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