FATE【BL】
第46話 3頁
「なぜだと?フェガーは俺の帝国の大将だ。大将は王の傍にいる義務がある。お前らもそうだろう?」
ラーカインは意地悪い答え方をし、他の王の傍にいる大将を見やった。
レイサックは一瞬、炎王を怒鳴りたいと思った。ラーカインは分かっているはず。さっきの質問の意味と期待された答え。ただ、わざととぼけた。
「裏切りのこと、許したか?」レイサックは質問でもっと押し付ける。
レイサックはラーカインを会ってからまだ一年未満。だが、性格は十分に知っている。ラーカインは、絶対に裏切り者を許さないのだ。絶対に。なのに、なぜフェガー大将は生きているか、不思議であった。
「そうだ。許した」ラーカインは即答した。
レイサックも含め、水帝国の国賓室にいる者は驚いた。ラーカイン炎王は、裏切り者を許したのは、信じ難いことだ。あり得ない。
「フェガーに助けられなきゃ、今お前はもう墓の中だ。違うか、フォアナックス?」
炎王は、土帝国の大将の方に向けて、問った。フォアナックス大将は頷き、「仰った通りでございます」と答えた。
「は?フォアナックス大将と何の関係がある?」
レイサックだけは、今朝の報告を知らなかった。当然、土帝国の大将が捕まったことも初耳だ。なぜここで土帝国の大将の名が出てくる。また、混乱で頭が痛くなってきた。
「もう説明はいいだろう?俺は説明する為にここに来たんじゃない」
ラーカインは機嫌悪そうに言った。説明する為ではないとすれば、ここに来た他の理由は何であろう。
やはり・・・何かおかしい・・・
ラーカインは何を隠している・・・
その時、指摘を言い出したのはバーナッドであった。
「確かに、昼間のことフェガー大将の援助が必要でした。ですが、それは途中で気変わったことには見えぬ。すなわち、最初からこの混乱は、そなたとフェガー大将が企んだことだったでしょう?」
土王の声はいつも以上に冷たく感じる。バーナッドの怒りは満ちている。
バーナッドの指摘を聞き、ラーカインの顔に笑みが浮かんだ。
「そんなに怒んな。バスなら最初から気付いたと思った。『敵を欺くためにまず味方を騙す』ということだろう?」
バーナッドの隣で立っているフォアナックスも呆然とした。捕まる前に土王の言葉が頭に浮かんだ。
<<『もしフェガー大将と会ったら、戦うな。けれど、殺されようとすれば、別の話だ』
>>
(王は最初からそういうことを推測していた!)今になるとその命令を納得したフォアナックス。
フェガー大将は『裏切り者』ではない。正しいのは『協力者』であった。
へらへら顔をしたラーカインと親友をからかうような答えを聞いた途端、レイサックは一気に頭に血がのぼった。
最初から企んだ?・・・
裁判の時何か起こった?・・・
この混乱は全て茶番なのか!?・・・
「どういうことだ!?ちゃんと分かるように説明しろ!!!!!!!!」水王は思いきり怒鳴った。これまでの自分の行動、涙、哀しみ、王族の墓の前で泣いていた自分等々、この間に出来たことが一気に繰り返した。
騙された・・・
事実はどうであろうと、今は明らかになったのは、ラーカインがフェガー大将に裏切られていなかった。悔しくて、感情を抑えきれず、暖かい涙が溢れ、ディープ・ブルーの瞳から次々と落ちてきた。部下の前で立っているのに。
恥ずかしい・・・
情けない・・・
でも、涙が止まらない・・・
「泣くんな、『ロス』」
力の強い声が国賓室に響く。ラーカインの声だ。はっきりと水王をあだ名で『ロス』と呼んだ。国賓室にいる水帝国の者も、その変化に気付いた。
レイサックは俯いた顔を上げ、ラーカインを見詰める。すると、ラーカインから思わぬ言葉が耳に届く。
「すまん。カリナの葬儀の前に早く片付けてやりたかった。だが、アイツは案外と手強かった。俺も今回は初めて『敗北』の気持ちを味わった」
==9月19日更新==
お待たせしました〜
T&Bライブビューイベント楽しかったです!最高〜月神紫苑
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