FATE【BL】
第45話 5頁
ワーヤス大将の考えが一変した。命をかけても、主を止めると覚悟してきたが、今は一緒に行くことに決めた。
理由は三つ。一つはレイナレス皇太子の言葉を確かめたい。二つは、心に浮かんだ問いを答えたい為だ。そして、三つは・・・
「却下だ。万が一、俺の身に何があったら、この水帝国の次王を探すのは、ワーヤス大将しかいない」
レイサックは即答し、目の前に跪いているワーヤスを否定した。
水帝国は、今水の魂を持っている者はいない。また、ワーヤス大将以外、副大将らは任命されたばかり。最悪の場合、次の水の魂を持つ者が現れる時まで、ワーヤス大将と貴族らを任せるしかない。
「いいえ。一緒に参ります」
揺るぎない声でワーヤス大将は、意志を語った。
「これは命令だ。水帝国に残れ」
「無礼を承知の上で、申し上げます。今度限りは、王の御命令を従いません」
「ワーヤス!」
部下にはっきりと命令に従わないと言われたとは、生まれて初めてであった。特に、相手は一番親しい側近である。
王の命令に背く罪は、重罪だ。それに、行動だけではない。はっきりと口にした。以前の、手紙を隠すことや、報告しなかったと含めて、簡単に見逃れない。ワーヤス大将は、罰を受けることを覚悟していたに違いないと水王が思う。
今度、ワーヤス大将がゆっくりと語る。
「私は既に重罪でございます。戻ればすぐに処分を受けて参ります。従って、最後として王のお傍にいさせて下さい。私が生きる限り、王を御守りいたします。チャナック前水王とレイナレス皇太子と同じ心配を繰り返させません」
理由は三つ。一つは確かめたい。二つは、答えを探す。そして、三つは、王の楯になる。
ワーヤス大将は、チャナック水王の時代から大将を務めていた。レイナレス皇太子と妃が炎王に殺された時、彼はチャナック前水王の傍にいた。また、チャナック前水王の時に、彼は傍にいながら、何もできなかった。戦場における王と王の闘いは、誰も手出したりすることが出来ない。王と王の闘いは、誇りをかけたことであるから。
二度も守れなかった。今度こそ戦場でギリギリ水王を失うところであった。もしあの時にアルタイル風王が、真中に入り込まなければ、今レイサック水王の命はなかろう。
これから行く炎帝国は、戦場ではない。潜り込むのだ。見つけられれば、殺されても文句を言えない。ならば、最後の息まで、レイサック水王を自分の身と力で守りきってみせる。ワーヤス大将はそう決めた。
真っ直ぐな桔梗色の瞳を見詰め、レイサックは深い溜め息を付いた。主も部下も同じ。火に飛び込んでいると分かっているものの、のこのこと飛び込んでしまう。
(この状態なら、拒んでもきっと後付いていくだろうし)とレイサックは思い、側近に告げる。
「良いだろう。行こう、ワーヤス大将」
ワーヤス大将は、跪いたまま感謝の言葉を述べた。レイサックの言葉通りに、立ち上がり、水王と水帝国の大将は、誰にも教えずここから炎帝国へ行こうとする。
すると、ある若い兵士が彼らの方向へ向かって生きた。必死に走っていたせいで、息が乱れ、報告が上手く出来ない。
「王・・・はぁはぁ・・・たい・・大変で・・・ござ・・・い・・ます・・・。ただいま・・・土王と・・・風王が・・・こく・・ひん・・しつ・・に」
==9月13日更新==
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