FATE【BL】
第45話 2頁
前日バーナッドが現れた時に、今ラーカインが拷問されていると言った。心配ですぐに炎帝国へ飛び出したかった。だが、それは何も変わらない、むしろラーカインの足まといになってしまう。
ルース、新炎王と名乗った男。土王さえあの男に勝てないと言った。ラーカインはどんな目に遭っているであろう。想像するだけで胸が痛む。無力な自分を憎んでしまう。それで、ここで引き籠り、祈り続けた。今これしかできなかったから。そして、今朝いつの間にか気絶してしまった。
レイサックは掌に二つに砕けた誓いの宝石を見詰める。
いつ砕けたか?・・・
それすら分からない・・・
もし気絶しなければ、砕けた瞬間を見たら、彼はすぐにここから出て、炎帝国へ飛んでいったのであろう。こんな大切な時間になぜ気絶なんかしたと、水王は自分を責める。
「今でも遅くない!」
砕けた宝石を心配するよりも、今は炎帝国へ行って自分の目で見ることの方が大切と考えた。レイサックは立ち上がり、砕けた宝石を服の中に入れ、外へ出る。
死ぬな!
死ぬな!
お前を信じる!
だから、死ぬな!ラーク!
・・・・・・・・・
日が暮れる前から、炎帝国の王族の墓の前で、ワーヤス大将が立っている。手紙を受け取ってから、もうすぐ一日が経つ。
土王の言葉によれば、夕方までに手紙を渡してはいけない。だが、間もなく夕方が訪ねる。青空が赤空に変わるにつれて、ワーヤス大将の心臓が高鳴る。
どうする?・・・
日が暮れたら王に会いに行くか?・・・
以前の手紙の内容を考えると、今回の手紙は、もっと恐ろしいものになるに違いない。
自分の行動が、水帝国の将来と関わっている。
言うか・・・言わぬか・・・
ワーヤスは混乱している。炎帝国に忍びこんだ者は一人も戻ってこない。連絡は今朝に一度きり。
一つは、ラーカイン炎王の裁判は未公開で、国賓室の内で行われる為、情報を獲得は不可能かもしれない。そして、もう一つは、土帝国の大将と副大将五人が捕まった。牢屋に連れて行かれ、今日の裁判で一緒に処刑される可能性が高いと。
『土帝国の大将』という字を読んだ時に、心が苦しくなった。あの強い意志を持つ藤色の瞳を思い出す。
「フォアナックス・・・お前はここまでか?」風と一緒に溶けてしまうような小さな呟き。
あり得ない!
ワーヤスの脳内に浮かんだ答え。
あり得ない!
いくら考えてもあり得ない!
フォアナックス大将のように力を持っている者は、この神世界では非常に数少ない。それに、四人の副大将と一緒にだと。どう考えても信じられない。
他帝国へ潜り込み、反乱を起こそうと判断されれば、死刑しかない。だったら、何故!何故簡単に捕まれた!?理由は必ずどこかにある。
罠か?毒か?色々なことを当ててみる。全て考えられなくもないが、怪しいのは、報告の中で、重傷や死亡のことはなかった。
土王を除き、五人は土帝国の最強な者。捕まれたら、処刑される。こんなこと土帝国に入る前に、覚悟したはず。が、抵抗の気配がないのは、やはり理由がある。でも、それはなんであろう。処刑されるぐらい大事なことなのか?
ワーヤスは手の中の手紙を見る。あることが頭に浮かんだ。
<<「与の命令を受けるかどうかはそなたたちが自分で決めなさい」>>
バーナッドが手紙をレイサックに渡すなと告げた時に言った言葉。
『命令』・・・・
ワーヤス大将は、土王の命令なら死ぬと知っても、フォアナックスらは抵抗しない。でも、その命令の理由は、全く思い浮かばない。
「土王、いったい何を企んでいるでしょう?」再び自分の想いを口にしたワーヤス。
すると、王族の墓の扉が強く開かれた音がし、レイサックが現れた。青いガウンには、はっきりと赤い血が付いている。
==9月5日更新==
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