FATE【BL】
第45話†心の覚悟†
太陽は空からお別れをした贈り物として赤い色を染めてあげた。
水帝国の空は、赤から紫へ、そして、星が出番を待ちくたびれている。
煌めく。キラキラと平和な夜空であった。
水竜殿の王族の墓の前で、レイサック水王は床に伏せている。美しいディープ・ブルーの瞳は閉じており、背中は上下に動く。乱れたりはしていない。
夜になると、青い石の床から冷たさが水王の身体に染み込んだ。神は人間と違って、風邪等引かない。だが、病気によって体力が落ちてしまうことはある。
体温が下がったせいか、細い身体は動き始めた。
「う・・・」
喘ぎ声を上げたレイサックは、ゆっくりと座り姿勢に変えた。周りの状況がはっきり見えない。二三度目をこすった。
(気絶したか?)自分に問いかけた。緊張と興奮が限界を超えたらしい。最後に思い出したのは、墓の前で願っていた自分。
床の冷たさが肌に伝わってくる。夜になった。脳内にそう答えた。天井には空が見えるように造られた為、レイサックは慌てて、仰向けて確認する。
煌めく星がその答えであった。
(ラーカインはどうなっている?ワーヤス大将が来ないというのは、大切な連絡が来ていないか?)
色々な考えが浮かんだ。どうすれば良いか分からない間には、先ず、外に出ようと思い、立ち上がろうとすると、掌から痛みが走った。
「痛いっ!」思わずに悲鳴を上げた。
赤い血が掌から床にぽたぽた落ちた。立ち上がろうとした時に、こぶしを握った。それで、握っている『もの』を強く握ってしまった。
レイサックは、自分の掌に何かあるのかを知っている。こぶしを開けることだけだが、簡単には出来ない。むしろ、手が震えて、こぶしがもっと強く握ってしまった。
小粒の涙が頬を通った。痛みのせいではない。『もの』の正体を知っているから。
思い切って手のこぶしを開くと、手の中では、丸形だった赤い宝石は、二つに砕けた。
誓いの宝石・・・炎の魂の欠片・・・
割れるはずがない・・・
割れるなら、一つの理由しか浮かばない・・・
主が死んだから・・・
==9月3日更新==
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