FATE【BL】
第41話 2頁
<<「僕は炎帝国へ行く!」>>
レイサックの発言はアルタイルの想定内であった。風王は最初の一行目を読んだときに、こうなるであろうと思った。
風王は慌てずに、冷静にレイサックに告げる。
「ロス。ラーカインを信じてみると言ったのは君だった。今更、言葉を取り消すつもり?明日は姫の葬儀だ。君が出席しなければどうなる?」
「分かっている。けれど、アルも思うだろう?ルースという奴がここまでやったとは、よっぽど自信がある。きっとラーカイン達に何があったはずだ」
水王が心配していることは風王が心配していることと同じ。
水王になって一年未満にもかかわらず、レイサックは王族生まれ育ちで、王の見る目と判断力を自然に持っている。
二王がもう一つ気付いたことは、ルースの手紙にラーカインの死について何も書かれていなかった。
たとえ本人と会ったことが無かったとしても、手紙から判断すると、ルースのような者なら躊躇わずに、ラーカインの死について書くに違いない。
けれど、それについて、ラーカインの現状のことでさえ、何も書かなかった。
おかしいと思う反面、なぜルースはそこまで自信を持っているかが分からない。
それで、悩むよりも、現地を見に行った方が良いとレイサックが思った。
「明日までに必ず戻ってくる。無謀はしないと『約束する』。
この寝室は明日までにアル以外誰も入らないから、アルが言わなければ誰も分からない。お願い、アル。知らないことにしてくれ」レイサックは親友を真剣に願う。
また・・・その言葉だ・・・
『約束』・・・短くて重い言葉・・・
痛い思い出が風王の心の中に浮かんだ。『無謀はしない』と約束するといっても、今の炎帝国の状況ではレイサックの安全を保証できない。
それで、絶対にレイサックを炎帝国へ行かせないと決めたアルタイルだが、普通の言葉だけではもう親友を止められないと思った。
すると、風王の顔は優しいからあまりレイサックに見せない真剣で厳しい顔に変わり、水王に告げる。
「短気は何を及ぼすか、君は分かっているはずだ、ロス」
短いけれど、レイサックにとって十分に意味が伝わってきた。カリナ姫の死も、アルタイルが力を遣えなくなったことも、全て自分の短気のところのせいであった。
最悪感は再び心の中に溢れ出し、親友の言葉に何も答えられなく、レイサックは顔を俯き、黙り込んだ。
かつて最愛の者は自分の言葉で落ち込んでしまった顔を見ると、風王も悲しくなってしまう。けれど、今はこの言葉しかレイサックを止められないと思ったからである。
アルタイルは深く息を吸い、二つの選択を言い出す。
「今二つの選択がある。君はそこまで行きたいなら、僕も連れて行きなさい。そして、もう一つの選択は君が大人しくここに居て、僕に任せなさい」
一つ目は絶対に選ばないレイサックは、二つ目の選択に疑問を持った。アルタイルは力を遣えない。『僕に任せなさい』とはどういう意味であろうか。
==2月23日更新==
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