FATE【BL】
第40話 10頁
その後、レイサックはこれまでと同じ大人しく寝室に休養した。けれど、毎日アルタイルはワーヤス大将の代わりに仕事を運んでくる。
更に、夜になると風王と水王は一緒に添い寝をし、昔話を話し合う。
たまに、レイサックはラーカインを思い出すと、窓の外を眺めたりする。
水王の心の中では『今ラーカインを信じるしかない。ラーカインならば必ず勝てる!』と自分に言い、『お前を信じる!無事にいてくれ!』と願い続ける。
アルタイルも親友の考えることが分かる。彼は今レイサックの隣にいるしかできない。情けないと思う反面、力が遣えないからこそ、レイサックを止めることが出来る。
昔のように彼は力が遣えば、水王は彼を頼み、一緒に炎帝国へ行くであろう。力が遣えないことで、『止める役』としても役に立つ。
だが、時間が経ち、カリナ姫の葬儀はそろそろ明日である。
しかし、レイサックの願いは相手に届かなかった。更に、昼間時に、炎王の使者と名乗る者が水帝国へ来た。
彼は水王に手紙を渡せたいと告げ、側近らはレイサックが式の準備で忙しいという理由で断った。
断れた使者は手紙だけ側近に預け、炎帝国へ戻った。
ワーヤス大将をはじめ、水帝国の貴族らはその手紙の内容と使者の行動にとても気になる。
反乱中の炎帝国からの手紙。どう考えてもラーカイン炎王らしくないやり方。けれど、レイサック水王宛てと言われる為、勝手に開封してはいけない。
にしても、水王を直接に渡すのも怖がっている。
すると、ワーヤス大将はアルタイルと相談した。風王は手紙を預かり、レイサックがこの手紙を読む時、一緒にいることにすると言った。
手紙をもらったレイサックは疑問に思った。
「炎王だと?」
どう考えても手紙を送ることはラーカインらしくない。封筒を察すると、ちゃんと炎帝国の鳳凰の赤印鑑を押された。
水王は今の状況で、ラーカインが手紙しか連絡できないかもしれないと思い、開封し手紙を読む。隣にアルタイル風王も一緒に読んでいる。
一行目の内容だけで、二王は目を大きく開き、互いに見詰め合う。
『拝啓 レイサック水王殿・・・
わたくしはルース新炎王、お初お目にかかります・・・・』
「新炎王・・・何のことだ!!?」レイサックは叫んだ。
手紙の内容は自ら挨拶しに行けなくて詫びをするというとても丁寧な言葉を使う手紙である。また、炎帝国は不安定である為、明日のカリナ姫の葬儀には参加できないと。
それに、手紙の最後はレイサックの心に剣を刺したようなことが書いてある。
『最後に、レイサック水王殿のお蔭で私は炎王になられました。心から感謝しております。水王殿は非常に美しいと周りからよく伺います。いつか必ずお会いできればと思います』
手紙を持っているレイサックの手が震える。ディープ・ブルーの瞳から涙がこぼれそうになっている。
ルースは恐らく裏切り者のフェガー大将から彼の話を聞いたであろう。それで、彼とラーカインの関係を知っているかもしれない。
今回ラーカインが倒れ、力が遣えなくなるのも彼のことだと分かり、この手紙は本気で感謝するよりも、皮肉に言いたいだけであろう。
「絶対に認めない!炎王とはなんだ!!?ラーカインがいるのに!」レイサックは怒鳴り、手紙を二つに破り、床に投げた。
「落ち着いて、ロス。さっきの印鑑を見たんだろう?今の鳳凰殿はアイツのモノになったはずだ」アルタイルはレイサックを慰めた。
ルースが炎王と名乗ったことは大分自信を持っているとアルタイルが判断した。
他の帝国の行事では帝国軍を出せない為、バーナッドはフォアナックス大将と二十人程の兵士しか連れて行けなかった。
この戦いはかなり時間がかかると思ったが、ここまで早く進むと思わなかった。もしかしてバーナッドとラーカインに何が起こったかもしれないとアルタイルは心配しているが、レイサックには教えなかった。
「僕は炎帝国へ行く!」レイサックは決心を大声で言った。
==2月21日更新==
==第40話†止めの一撃†【完】==
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