FATE【BL】
第40話 9頁
「強い絆を持っているって羨ましいね。僕はアルと比べ物になれない」レイサックは素直に気持ちを親友に告げた。
アルタイルは俯いているレイサックの顔を上げ、見詰めながら言う。
「今から絆を作ればいいじゃないか?まず、ラーカインの言葉を信じるからだ」
レイサックのディープ・ブルーな瞳は大きく開き、アルタイルから教えたことは当たり前のことであるけれど、それについて考えたことが無かったレイサックにとって、真っ暗な海底に光が見えたと感じた。
切られれば・・・直せ!
無ければ・・・作れ!
簡単で当たり前のこと。だが、当然すぎて忘れてしまう・・・
「アル、ありがとう。僕、ラーカインを信じる!ラーカインならきっと無事に戻るはず!」元気が戻ったレイサックは大声でアルタイルに告げた。
アルタイルの顔に笑みが浮かび、親友をからかう。
「ラーカインにはあまり応援したくないけど、ロスの為なら全力で応援するよ。しかし・・・君を盗まれた気はどうしても無くならない」
「僕の方がバーナッドにアルを盗まれた感じ・・・ちょっと淋しい・・・たとえ、離れたとしても、僕たちはまだ親友だよね?」レイサックの顔には淋しげな笑みが浮かんだ。
バーナッドと一緒にいると決めたものの、レイサックの淋しい表情を見たアルタイルは、かつて誰よりも愛しかったレイサックへの感情を抑えきれずに、レイサックを引き寄せ、強く抱き締め、水王の肩に顔を埋めた。
「ア・・アル・・」少し驚いたレイサックは親友の名を呼んだ。
アルタイルは顔を上げないまま告げる。
「淋しいと言うな!僕たちはずっと君の親友だ。いつまでも」
風王の言葉を聞いた水王は親友を抱き返し、呟く。
「ありがとう、アル。いつまでも」
二王がしばらく抱き合った。アルタイルは外の月が空の真中になったと見て、深夜になったことと分かり、レイサックに言う。
「もう月は空の真中になった。そろそろ寝よう。僕は寝室に戻る。明日また来るからちゃんと休んで、ロス」
アルタイルは立ち上がる時に、緑色のガウンが何かを引っ掛かったと感じ、向いたら、それはレイサックの手であった。
レイサックは少し恥ずかしそうに、目を逸らしながら話す。
「せっかく昔のことを思い出したし。ここに居る間に添い寝してくれる?実は僕あまり独りに居たくないんだ」
カリナ姫の葬儀が近ければ近いほど、レイサックは愛しい妹を失った日を思い出す。血まみれの身体は今でもはっきりと記憶に残っている。
唯一の家族。カリナ姫。二度も戻ってこない。
その寂しさと悲しさを独りで戦え続けてきたレイサックは、更に、ラーカイン炎王のことで、不安が何倍も増えた。
それで、アルタイルを誘った。
一方、二か月前に、もしレイサックが彼にこのようにおねだりしたら、彼が死ぬほど喜んだであろうとアルタイルが思う。
だが、今日は違う。冷静になったアルタイルはレイサックが彼を誘った理由を理解している。
また、アルタイルのレイサックへの愛情の量が減るわけではなく、愛の仕方が変わっただけである。
自分のモノにするのではない・・・
自分の『モノ』が出来たから・・・
今はかつて愛しかったレイサックを幸せになってほしい・・・
これが今アルタイルの『本望』である・・・
「いいよ!寝よう!」とアルタイルは満面な笑顔で答えた。
その夜、二王は水竜殿の寝室で同じ寝台で眠り、昔と同じように二王が片手を繋ぎ、睡眠の帝国へ入った。
==2月19日更新==
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