FATE【BL】
第40話 8頁
レイサックは自分に対するアルタイルの気持ちを知った日から、これまでひたすら否定し続けていた。その結果はカリナ姫の死とアルタイルが力を遣えなくなったこと。
また、自分がラーカインのことを好きになり、恋の痛みを学んだ。
誰かに恋をすることとは・・・
我さえ忘れしまうほど・・・
愛しい・・・
レイサックはアルタイルが彼のことを忘れ、バーナッドを選んだと思っていた。
風王の言葉を聞くと、水王は親友の顔を見詰め、難しい顔をし、なるべく相手に傷付けないように言う。
「ごめん。アル。僕はアルの気持ちを答えられない。けど、アルは僕の一番の親友だ。今までも。これからもずっと。僕はちか・・・」
レイサックは『誓う』という言葉を言い終えなかった。口がアルタイルの手に塞がれたから。
「分かっている。誓わなくてもいいんだ。僕にとって誓いはもうさんざんだ」アルタイルは優しく告げる。エメラルドの瞳には言葉以上の深い意味が隠れている。
「アル・・・」どうしてもアルタイルのことが気になるレイサックは親友のあだ名を呼んだ。
相手を心配しているのに、逆に心配そうに見つめられたアルタイル。風王はクスクス笑い、抱き締めているレイサックを寝台の上に座るように誘った。
二王は寝台に座り、アルタイルは指でぼろぼろ零してきたレイサックの涙を拭きながら、言う。
「ロス、覚えるか?子供の時、僕は君と毎週一緒に添い寝すると約束していた。ある日、行事で僕が来られないと兵士に知らせてきたのに、君は寝るところか、寝室さえ入らなかった」
過去のことを聞くと、レイサックの記憶の中から昔の自分が浮かんだ。
あの夜、どうしても寝室に入れなかった彼に、結局、母上が使者にアルタイル皇太子を呼んでくれと頼んだ。
自分の子供時代を思い出すと、恥ずかしくなってきたレイサック。顔は赤く染め、そして、無意識に涙が止まった。
「確かにあの時周りに迷惑をかけたな・・・」レイサックは恥ずかしそうに呟いた。
アルタイルの顔は嬉しそうに昔話を続けた。
「呼ばれた僕は深夜に来たら、君が自分の寝室の扉で待っていた。僕を見ると、喜んで僕の腕へ飛び込んできて、『アルがきっと来ると思って、待っていた』と言った」
「アル・・・もうやめて・・恥ずかしい!」自分の三百歳の時の話を思い出され、顔が真っ赤になったレイサック。
けれど、止められた風王は話を止めず、窓の外を眺め、言う。
「あの時、僕は『この子は心から僕を信じてくれる。僕もこの子を信じる』。あの時、僕は『ある者』に裏切られたと『思い込んで』、二度と誰も信じないと思っていたのに、それを忘れさせてくれたのは君だったんだ、ロス。
それに、今になると、あの思い込みは間違えたことも分かったし」
アルタイルはレイサックと喋っているが、視線は窓の外である。風王の頭の中には昔の記憶が頭と心の中に溢れている。
レイサックは親友の眼差しを見て質問する。
「アル、『ある者』とは、バーナッドのこと?」
すると、風王は隣に座っている水王に向け、微笑みを見せて頷く。
「ロス、僕は見えないけど、今僕の周りにバーナッドの力が君をムカつかせるほど囲まれているんだろう?」アルタイルは聞き返した。
アルタイルが寝室に入った瞬間から感じていた。バーナッドの守る力。今でも紫色の力がアルタイルを暖かく囲んでいる。
親友である彼と会うのに、なぜ守る力が必要かと、アルタイルが言った通り、最初に彼がムカついた。
レイサックは『うん』と頷いた。けれど、さっきの話とこの力の話はどう関係しているか、水王は分からなかった。
アルタイルはそれについて自ら説明する。
「バスは『二度と僕から離さない』と誓った。今回のラーカインのことを聞いて、独りで行ってと言ったのも僕だった」
アルタイルはバーナッドに言ったことをレイサックに教えた。
炎帝国の反乱を聞いた時に、ラーカインが正常な状態ではないことは明らかであった。炎王がこのようなことを起こさせる者ではないから。
心配そうになったバーナッドを見て、アルタイルは自分が力を遣えないことから、自分を連れて行ったとしても、ろくなことが無いと思い、独りでラーカインを助けに行ってと言った。
続いて、風王は炎帝国に出発する前のバーナッドの行動を話す。
「あの日、バスは守る力を僕にかけ、何があったらすぐ飛んで来ると言った。過保護と思うんだけど、バスならこうなると思った。バスは絶対に僕との誓いを破らないから、いつまでも・・・」
アルタイルの声は幸せそうに、悲しそうに聞こえたレイサック。きっと幸せであるはずの親友か、なぜその言葉の中に悲しみが入っているように感じるのであろうと水王が思う。
「アル、君はバーナッドのことを好き?」レイサックは親友の気持ちを確かめるように聞いた。
すると、アルタイルからすぐ答えが出て来なかった。それに、最初に言ったのはバーナッドの名前ではなく、レイサックのことであった。
「・・・・君のことを愛しているんだ、ロス。」
その瞬間レイサックは親友がバーナッドに愛用をあげていないと思い込み、慌てて告げる。
「アル!前に僕が言ったようにいつでも水帝国に来ても良いから、大歓迎だよ!遠慮しないで。バーナッドが強引に君を閉じ込めるなら、僕が助けに行く!」
号泣で落ち込んだ状態から、いきなり逞しく見せたレイサックは可愛らしくて、アルタイルはにこやかに笑った。
「ありがとう、ロス。僕はバスのこと『も』愛していると思う。けど、それよりも、ずっと傍にいて欲しい。そして、僕もバスの傍にいたい。昔の時間を取り戻せないのなら、これから僕はずっとバスを信じてあげたい・・・」
親友の言葉を聞き、レイサックはほっとした。
が、アルタイルはバーナッドと強い絆を持っていると思わなかった。
自分とラーカインと比べれば、会ってからまだ一年未満。
強い絆はどこにもない・・・
あの日、ラーカインになぜ水帝国を返さない理由が頭に浮かんだ。
<<「常識に考えろ。お前を助けたとはいえ、俺はお前の敵の帝国の王。普通ならば、四帝国の規則違反になれるはず。お前は訴えなくても、あいつらはこの機会を逃さんだろう。
もしも、お前に水帝国を返したら、これからの侵入は面倒になりそうだ。あいつらは必ずずっとお前の近くに誰かを置く。俺を発見して訴えられるようにな」>>
レイサックはようやくラーカインの気持ちを分かった・・・
有るように・・・けれど・・・無いように、彼とラーカインの絆・・・
そう思うと、水王淋しく感じ俯いた。
==2月17日更新==
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