[携帯モード] [URL送信]

FATE【BL】
第36話 11頁
「父上!!なぜ!?」アルタイルは、彼がよく知っている優しくて暖かいゼファー父上と丸で別人のようである。アルタイルは父上にバーナッドを斬った理由を聞く。


 だが、ゼファーから答えも説明もなかった。前風王が血だらけの風の剣をしまえただけ。


 いつも誰よりもバーナッドを可愛がっているゼファー前風王は、ここまでするとは、誰も想像できなかったのであろう。アルタイルはもちろん、バリアの外で待っている土と風帝国の大将も驚くを隠せない。


 「王!!!!」フォアナックス土帝国の大将は、さっきのアルタイルのように、バリアを何度も叩き続ける。


 「ゲレル大将、もう一度一緒に穴を作ろう!」中に入ろうとする土帝国の大将は、敵である風帝国大将を頼む。

 
 「いいえ。あなたが中に入らせて、前風王に何が起こるかもしれない」ゲレル大将はフォアナックスの願いを却下した。


 頼む者がいないフォアナックスは、剣に力を集中し、自力で土王を助けようとする。

 「全力を尽くしても王は必ず助ける!」

 そして、土帝国の大将は、何度もバリアに攻撃した挙句、バリアは崩れる様子は全くない。


 一方、中の様子を見ているゲレル大将も、前の主の行動は案外であった。これまで敵として見たことも無かったゼファー前風王は、なぜそこまでバーナッドを追いかけただろう。
 


 バリアの中では、ゼファー前風王から何の反応も無かったため、無視されたアルタイルが悔しそうな顔をし、後ろに倒れているバーナッドの具合を見る。


「バーナッド!!しっかり!!傷を見せろ!」アルタイルはバーナッドに告げながら、血まみれのガウンを脱がそうとする。

自分はもう回復力が遣えないと分かっているが、手当て程度でも良いとアルタイルが思う。


 ガウンを触った途端に、感触で下にあるはずの土の鎧がないと風王が分かった。それで、アルタイルがさっき抱き締められた時、土王からの体温が風王に直接伝えられたわけだ。


(鎧を着ていないのに、何が簡単に死なないんだ!)

 
 アルタイルは歯を食いしばり、心の中で土王を叱った。肉体対強力な剣、誰の勝ちが、子供されわかる。風王はガウンを脱がすと、目の前にある真実がまるで嘘のようで、驚いた。


 「は!これは?」


 血まみれのガウンの下に、バーナッドの左の胸にあったはずの傷が全て治った。残っているのは、心臓の近くから左の肩まで、一本の細長い傷跡である。この傷跡は、さっきの切り傷であろうとアルタイルが思う。


 また、その傷跡は既に前からあったように、胸にはっきり見える。普通、土王のように強い回復力を持っている者は、傷跡等は残っていないはず。


 アルタイルが戸惑っている時に、さっきまで苦しんでいたバーナッドは、横になったまま、右手でアルタイルの頭を軽く撫でる。


 「もう大丈夫です。ゼファー様が治して頂きました」バーナッドの声はさっきより良くなってきた。けれど、傷が治ったものの、力はまだ回復しているようである。


 ゼファー前風王の最後の剣は、『とどめ』ではなく、『回復』のためであった。


 それを聞いたアルタイルと外にいる二人の大将は、安心しているように、深い溜め息を付く。


 自分が誤解したと分かり、アルタイルは父上の方に振り向けると、ゼファー前風王は既に、二王の隣に立っている。前風王は冷たい声でバーナッドに告げる。


 「胸の傷跡は一生治れないようにした。これが『父親の心の痛み』だと思え、バーナッド」

 「はい」とバーナッドが答えた。


 この傷跡はバーナッドの『償い』になるという意味だとその場にいる者が捉えた。


 しかし、次のゼファー前風王の言葉を聞き、外で待っている二人の大将と中にいる二王は、自分たちが思ったことが、全て誤ったと分かった。


==7月26日更新==

[*前へ][次へ#]

12/88ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!