FATE【BL】
第36話 10頁
『兄上ですから』
アルタイルの発言は土帝国の内縁に響く。更に、風王は話を続ける。
「兄は弟を守って、何が悪いでしょうか?そして、私が決心しました…」
ここまで言うと、アルタイルの言葉は一瞬とまって、風王は深呼吸をし、迷いのない声で告げる。
「『約束』を果たすために、バス兄上は『一生』私を守らなければならない義務があります。私の傍に居るべきです。それが、私のこれからの『居場所』になります」
アルタイルは『バス兄上』という言葉を使った。また、アルタイルの発言を言い換えれば、これからアルタイルの『居場所』はバーナッドの傍になると同じ意味。
風王自身も、他人の前に、その言葉を口にすると思わなかった。
特に、相手は彼の父上である。
いや…
父上だからこそ、さっきの言葉が言い出せた。
彼とバーナッドの間の関係について、誰よりも理解している父上。
アルタイルの決め手になったのは、守ろうとした自分が、またバーナッドに守られた時。
広くて暖かい腕の中に抱き締められた瞬間、
昨夜の暖かさと、これまでの懐かしさが一気に心に溢れ出し、
バーナッドに対する気持ちは、もうこれ以上抑えられない。
レイサックと同じ『愛』であるかどうかまだ分からない。
ただ、アルタイルにとって、バーナッドが『大切な存在』だということは、はっきり分かった。
一方、バーナッドはアルタイルの言葉を聞いて、自分の顔を叩きたくなってきた。
叩かれたら、痛むかどうかを確かめたい。
もしかして、今自分が怪我で気絶して、夢でも見ているかもしれないと土王が思う。
アルタイルは彼を傍に居て欲しいと言った・・・
アルタイルが・・・
世界よ。これが夢であれば、もう永遠に眠れば良い・・・
これが幻であれば、このままでなってほしい・・・
しかし、これが事実であれば・・・死んではたまらぬ!!
バーナッドは怪我している身体を動かし、前に彼を庇っているアルタイルを、後ろから抱き締める。
「ちょ・・ちょっと!」いきなり後ろから抱き締められ、ちょっと驚いたアルタイルは後ろに振り向けた。
バーナッドはまだ整っていない息で、ゼファー前風王に言う。
「ちゃんと・・・・守ります。私が・・・いる限り・・・アルを絶対に・・・守って見せます!ゼファー・・・様、どうか・・・お許し・・・ください!」
さっきまで死ぬ覚悟をしていたバーナッドは、自分が死んではいけないと決めた。いつも前のことを計算して、行動するバーナッドは、自分の言葉を取り消すことは非常に珍しい。
「バーナッド・・・」抱き締められたアルタイルは土王の名を呟く。
ゼファー前風王の顔には冷笑が浮かんだ。これまでの冷笑と別の意味で、恐ろしい。
「自分の命が惜しくなってきたか、バーナッド?」嘲笑いしながら、質問する前風王。笑い声は、氷のように冷たい。
「はい」バーナッドは短く即答した。
すると、誰も想像することがなかった。ゼファー前風王は、握っている風の剣を振った。風の力で、バーナッドとアルタイルが別けさせられた。すると、バーナッドに抱き締められているアルタイルを傷つけずに、バーナッドの身体だけが狙われた。
土王の左胸から肩まで長く斬られ、赤い血がその場に飛び散って、倒れた。
「笑わせるな」剣を振った後、ゼファー前風王が告げた。
「ば・・・バーナッド!!!!!!!!」思わぬ展開で、アルタイルは悲鳴を上げた。
==7月24日更新==
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