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FATE【BL】
第36話 9頁
ガン!!!

 固い地面には二つの深い割れ目が出来、その力は如何に強いかが、一目瞭然である。

 「バーナッド!!」アルタイルは叫んだ。強く抱きしめられたから、バーナッドの後ろに何か起こったが分からない。だが、さっきの音、父上が剣を使ったに違いない。


 アルタイルは自分の手を見詰めると、暖かい大量の血がいっぱい付いている。

 「バーナッド!!しっかりしろ!!!」風王は心配そうな声で、告げる。


 バーナッドはアルタイルを安心させるように、もっと強く抱きしめて言う。

 「大丈夫・・です・・さっきの力は・・・全・・部・・・抜け・・・ました」

 バーナッドの辛そうで震えている声を聞くと、アルタイルは土王の怪我が非常に酷い状態だと分かった。

 
 ちゃんと見ると、バーナッドの血はさっき刺された傷から流れただけで、背中には無かった。


 前風王の剣の力は、二王を避け、左右の地面に当てた。ゼファー前風王はアルタイルが跳び込んだことを見たら、直ぐ力の方向を変えた。二千五百前と同じ事を繰り返したくないからである。


 「与は同じ失敗を繰り返すでも思うか?アルタイル、下がれ!バーナッド、アルタイルまで巻き込まれたくないなら、離れろ!」ゼファーは今の状態で、アルタイルまで怪我させるかもしれないと告げ、アルタイルがその場から離れようと命じる。



 前風王の言葉はバーナッドの心まで響く。

 (ゼファー様が仰った通り、このままではアルまで巻き込まれてしまう)土王は風王から手離そうとした。


 すると、アルタイルは、怪我しているバーナッドの腕の中から離し、前風王とバーナッドの間に立ち上がり、両手を広げ、叫ぶ。

 「いいえ!下がりません。父上の方がやめるべきです!」

 なかなか生意気を言わない息子であったアルタイルは、今他人の前に、父上に反対する言葉を言うようになった。


 「二度と言わせるな、ア・ル・タ・イ・ル・、下がれ」真剣な森色の瞳と厳しいゼファー前風王の声。

 「いいえ!下がりません!」アルタイルは恐れずに、即答した。

 「守りたいのか?この嘘つきで信用出来ない者を?」ゼファー前風王は、わざとのようにアルタイルがバーナッドを憎んでいることを取り上げた。

 アルタイルは父上の言葉を聞き、一瞬で考え込む。

確かに、バーナッドは嘘つき・・・

ずっと『約束』を密やかに持ちやがって・・・

俺の王としての誇りを無視して・・・

それでも・・・それでも・・・

『死んでほしくない』
 

 アルタイルは自分の心に問いかけた後、父親を説得する。

 「私はまだ生きています。バーナッドは約束を破っていません。しかし、もしこの場でバーナッドが死んだら、本当に『私を守る』という約束を破ることになります!父上は約束したことをおんみずから破るおつもりのでしょうか!?」


 「さっき言ったはず!君は本当に生きているか?王でもない、神でもない、人間でもない、今の君は何だ!?」ゼファー風王は、アルタイルに一番悩んでいることを聞く。


 前風王の言葉に、アルタイルの心の奥まで刺され、風王は答えられず、黙り込んだ。

 「お・・や・・め・・下・・・さい」バーナッドはこれ以上アルタイルの苦しむ姿が見たくなくて、ゼファー前風王を願った。


 「お前はもう黙ってろ!!!」アルタイルの怒りは限界を超え、後ろにいるバーナッドに振り向け、怒鳴った。

 風王は前にいる父上を見詰めながら、言う。

 「それでも、生きています。そして、王として役に立たなくても、私を守るという約束がある限り、バーナッド、『土王』は風帝国を攻撃したりしません。させません!」アルタイルはそう言い切った。

 
 その言葉を聞き、ゼファー前風王以外、バーナッドでさえ目を丸くした。

 (そう思っていたのか・・・アル・・・それで、私と『約束』をしたのか)とバーナッドは切なく、心の中に呟く。


少しでも手に入れたアルタイルからの信頼・・・

自分に守る権利を渡すきっかけの裏に、その考えがあったとは・・・

バーナッドは静かに心の底から悲鳴を上げる・・・


 「つまり、君は『生贄』になるか?アルタイル」前風王はアルタイルが望んだ状態を、もっと簡単な言葉で説明した。

 アルタイルはゆっくり顔を左右に振り、告げる。

 「いいえ。そうではございません。『生贄』ではなく、バーナッド土王は私の『兄上』ですから」

==7月22日更新==

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