FATE【BL】
第36話 8頁
「フォアナックス大将!!ここに居るんだろう?」
バリアの外に風王と風帝国の大将しかいないが、アルタイルは土帝国の大将の名を呼んだ。
バーナッドの命令で、この内苑に入ってこないはずだが、気配を消し、隠れているかもしれないと風王が思う。
すると、地面から、藤色の瞳を持つフォアナックス大将が現れた。風王にお辞儀をする。アルタイルの推測は正しかった。
ゲレル大将よりも若い土帝国大将の顔は、いつもの表現と違い、主を心配していることが分かる。
「ゲレルと一緒に、バリアの穴を作れ。一瞬でも良い」アルタイルは早速命じる。
フォアナックス大将は何を言おうとし、少し躊躇っていたが、結局、アルタイルの言葉に従うように頷く。
二人の大将が剣で穴を作ったと同時に、バリアの中では、バーナッドの命を狙っている前風王の剣が振り下ろす。
二人の大将の力を遣ったとしても、バーナッドの強力なバリアは消えないが、一人しか通せない穴が開かれた。
考えることもなく、開いた穴にアルタイルがすぐ飛び込んだ。風王が入れた途端に、穴がすぐ閉じ、二人の大将は外に置かれた。
バリアさえなければ、バーナッドとゼファー前風王までの距離がそんなに離れていない。
アルタイルは、バーナッドとゼファー前風王の剣の間に、飛び込み、レイサックの時のように、自分の命で、バーナッドを庇おうとする。
真っ正面から振り落とす父親の剣はアルタイルを斬る前に、庇われた側であるバーナッドはアルタイルを抱き締め、庇う側に変わった。
「アル!!」バーナッドはアルタイルのあだ名を叫び、剣に背中を向く。
バリアに穴があったと感じると、バーナッドはアルタイルがいる方向に振り向いた。風王が飛び込んだ時に、土王が庇う側に切り替わった。
二度とアルを失いたくありませぬ
そなただけは失いたくありませぬ
今度こそ絶対守ってみせます。
愛しいアルよ。一生そなた以上愛している者はおらぬ…
『約束』は守りました…
『簡単』には死にませんでした…最後の息まで守りました…
ただ、このまま死んだら、アルと別れてしまいます…
許せないのが分かるけれど、一度だけアルの口から、
『愛している』という言葉が聞きたいです・・・
バーナッドはアルタイルを庇いながら、頭の中にそう願っている。前風王の剣は二王にいる場所に振り下ろし、バリアの外から「王!」というフォアナックスの叫び声と、地面に強い力を与える音が、内苑に響く。
==7月19日更新==
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