FATE【BL】
第36話 6頁
「バーナッド、もっと力を入れないと、『簡単に』死んでしまうよ」嘲笑いながら、ゼファー前風王の攻撃が強くなっている。
一つ一つ振り下ろす剣が風の力とともに、バーナッドの身体を攻撃する。
一方、バーナッドから一度も前風王を攻撃することはなかった。土王の顔には疲れた表情が浮かんで、息も整っていない。非常に厳しい状況である。
この一方的な闘いは、長く続かなかった。ゼファー前風王の剣が弓に変え、風の矢が雨のようにバーナッドに降り掛かる。その矢は単なる鋭い矢ではなく、風の力に満ちている矢である。
全てを防御する為に、バーナッドは矢の攻撃に集中してしまい、彼の身体に近寄ってきたゼファー前風王に気付いていない。全て矢が消されたその瞬間!
筋肉が鋭い物に刺された音がバリアの外まで響く。
「う・・・・」
大きな風の剣は、バーナッドの左胸の肩よりに刺された。心臓より高い場所だが、この苦痛でバーナッドさえも小さな呻き声を上げる。
「バーナッド!!!!!父上!!!止めてください!!!お願いです」バリアの外からずっと戦いを見詰めているアルタイルが喚く。
声はバリアの中の二人に届いたが、アルタイルの願いを聞いていないようである。
(父上は本気でバーナッドを殺そうとしている。このまま、バーナッドは・・・)と風王が思う。
何度も叫び、何度もバリアを叩いたとしても、ゼファー前風王の反応はなかった。
バーナッドの大量の血が地面の芝生に落ちる。
叩いているアルタイルの手も血が流れている。
そんなに離れていない距離感なのに・・・
入れない・・・何も出来ない・・・
無力な自分・・・・力が遣えない自分・・・
(考えろ!!アルタイル!!!考えろ!!!でないとバーナッドが!!!)とアルタイルは思いながら、何度もバリアを叩き続く・・・
バリアの中に、ゼファー風王は剣を刺したまま、真剣な声でバーナッドに告げる。
「良いか、バーナッド。今与を攻撃しないと。君は本当に死ぬ」
痛みで息を切らしているバーナッドは、揺れる声で答える。
「あなた様は・・・本当に・・・酷・・い・・・お方・・・ですね。いつ・・までも。私は・・・あなた・・様に・・・剣を向・・・ける・・・つもりは・・・ござ・・いません」
バーナッドの言葉は昔と同じ。彼にとって、ゼファー前風王はもう一つの父上。傷付けるだけでもしたくない。
「アル・・を・・た・・の・・み・・・ま・・す」紫色の瞳が森色の瞳を見詰めながら言う。
答えを聞き、ゼファー前風王は、バーナッドの身体から剣を取り戻し、土王の胸を突くと、立てる力が残っているないバーナッドは簡単に地面に倒れる。
「それなら、死になさい」血まみれの剣をバーナッドに向けて、大きく振り下ろす。
==7月16日更新==
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