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FATE【BL】
第36話 5頁
 そんな過去があったから、バーナッドは自分の父に信頼を受けたことはおかしくないとアルタイルが思う。土王と父親の深い絆に残酷なワケがあったから。

 だが、バーナッドの過去を知ったアルタイルはどう反応すれば良いか、分からなかった。湧き上がった怒りが複雑な気持ちに変わり、言葉もさっき流れた涙も詰まった状態。

 
 バリアの中にバーナッドはほっとした顔をする。ずっと隠れていた過去は、『最後』の時に愛しいアルタイルに伝えられたから。これで思い残すことがない。バーナッドは前風王に告げる。

 「それで、命をかけたとしても、アルだけは必ず守りますと約束しました。しかし、私の不注意で、あなた様の信頼を裏切ってしまいました。どうぞ、私に罰をお与えて下さい」バーナッドは深く頭を下げる。


 そう聞いたゼファー前風王は、切ない顔から冷たい顔に変わって聞く。

 「与は君を殺さないでも思ったか?バーナッド」

 「いいえ。そんなことはございません。罰を決めるのはあなた様でございます」バーナッドは顔を俯いたまま答える。


 ゼファー前風王が冷笑し、闘争を求める。

 「ふ。良い覚悟だ。バーナッド、剣を出せ!最後は王らしく死ぬだ。死にたくないなら、与を殺せ」ゼファーは剣をバーナッドの首から離し、構える姿勢になった。
 

 このようなことは昔にも一度あった。バーリウス前土王バーナッドの兄上が、当時の風王であったゼファーに殺した直後、バーナッドは風帝国に行き、ゼファー風王から戦いを求めた。

 しかし、闘争の間にアルタイルが飛び込むと、ゼファー前風王が自分の身体で嫡子を庇ったため、闘争はバーナッドの勝利になった。

 その結果、風帝国は土帝国の植民地になり、土帝国の市民の怒りも抑えられ、争いは止められた。だが、代わりに、バーナッドとアルタイルの関係が完全に崩壊した。

 バーナッドは前風王の言葉を聞き、笑顔になった。

 「あなた様ならば、必ずそういうと思いました。私の方針はいつもと変わらず、あなた様を殺せませぬ。しかし、『簡単』に死ぬこともダメです。別の『約束』があるですから」

 バーナッドは立ち上がり、手の中に土の剣を呼び出した。二人の周りに、紫色と緑色の力が風のように回っている。これから、二人は本気で戦うことに違いない。



 バーナッドは別の『約束』と言った時に、アルタイルは昨夜の土王の言葉を思い出した。


<<「『簡単』には死にませぬ。最後の息までそなたを守ると誓ったから」>>


 (あの『簡単』はこんな意味かよ!この阿保王!!でも、父上は本気だ!今早く止めないと!)アルタイルは歯を食いしばりながら、二人の闘争を止めようとする。

 
 「父上、おやめ下さい!私はまだ生きています。バーナッドは約束を破っていません」アルタイルは怒っている父親を説得した。


 だが、ゼファー前風王は完全にそれを拒否し、大きい声で告げる。

 「君は生きていると言えるか、アルタイル?。王として、君は本当に生きているか?!!」アルタイルの言葉は火に油を注いだようであった。

 父親が言った言葉はアルタイルの心に刺された。事実であるからこそ、アルタイルの心はとても痛み、言い返せなかった。

力の無い王は、この世に存在していない・・・

ならば、俺は『何』だろう・・・


 バリアの外はアルタイルが落ち込んでいる反面、中には闘争がますます激しくなってきた。

 前風王は攻撃を始め、大きな風の剣を振り回し、バーナッドの首を狙う。

 バーナッドもその攻撃を受け、防御すると、次に周りから殺気に満ちた鋭い風が彼にかかってくる。

 「土よ。主を守れ!」バーナッドは土を呼び出し、鋭い風を全て止めた。


 (流石ゼファー前風王、この年になされても、力は一切落ちておらぬ)とバーナッドが思う。逆に、彼の方が押さえられている。


 表ではバーナッドが平気のように見えるが、アルタイルを蘇らせる時に、かなり力を遣ったため、実は今力もギリギリ限界になっている。


==7月14日更新==

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