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FATE【BL】
第36話 4頁
<<「わたくし、バーナッド土王、本日よりアルタイル風王に忠実を誓います。最後の息までそなたの傍から離さぬ。ずっと守っていきます>>

 虚しさを感じつつ、アルタイルの中に、昨夜のバーナッドの誓いが浮かんでいる。その言葉と今の状況を見ると、アルタイルは土王の言葉を信じた自分が愚かだと思う。


 バーナッドの首に剣が当てているとしても、水帝国の広場にいた時と変わらず、既に覚悟しておいたという冷静な態度である。

 (何か守るだの・・・息の最後まで守るだの・・・傍から離さぬだの・・・お前は自分が処刑されると分かっていたのに!!)


自分が死ぬ分かっていたから彼を自殺させないで、言ったであろうか?

もしくは、全く意味の無い言葉を吐いたと思ったであろうか?

どうであれ、守るという言葉は全て茶番であった!


 もう一度バーナッドに心を開いたアルタイルは、再び裏切られたと思い、怒りよりも心を許してしまった自分が許せない。


 「お前の言葉、絶対に信頼できないと思った!!!!」アルタイルは叫び、バリアを叩き続ける。

 昨夜中身体にかけた負担の上に絶望の気持ちが溢れ、立ていられなくなり、両膝が地面に付くと、アルタイルが小さな声で 『嘘づき』とつぶやいた。



 アルタイルの哀しんでいる姿をこれ以上見たくないバーナッドは、ようやく言い始める。

 「ごめんなさい。アル。ですが、アルとゼファー前風王は私の唯一の光です。ゼファー様、あなた様は最大の恩人、わたくしにとって父上より大きな存在でございます」バーナッドは目の前に立っているゼファー前風王を見詰めながら告げる。

 一方、前風王の表情は崩れず、冷たいままである。


 そして、土王は風王の方に向け、語る。

 「アルは初めて会った日から、誰にも触れたり、傷つけられたりしたくありません」

 バーナッドの愛言葉を聞くと、アルタイルはもっと腹が立ち、怒鳴る。

 「話を変えるな!!俺はお前の気持ちなんか聞きたくない!」



 しかし、バーナッドはアルタイルの言葉を無視し、語り続ける。

 「残酷な日々の中で、アルと会えるだけで、また、別れた日から、影から見守ることだけで、それが私のただひとつの幸せです」

 昔のことが見えるようにバーナッドは喋りながら、死神が待っていることを恐れずに、微笑む。


 「お前、何を話ているの分からん!!」アルタイルはバーナッドが言った『残酷な日々』のことを理解できず、バーナッドはただいつものように、彼のことが愛しいとか伝えたいと思っていた。

 だが、バーナッドはそう言うと、ゼファー前風王は冷たい顔から、切ない表情に変わった。

 一方、バリアの外にいるアルタイルは、父親の変わった表情に気付いていない。それで、アルタイルは、次にバーナッドが言うことがとても・・・とても大切なことだと思わなかった。


 バーナッドはアルタイルを見詰めるよりも、遠いところを眺めるような目つきをしながら、話す。

 「ラーナス前炎王の『遊び道具』として生きていた私。生きる意味すら知らず私に・・・」バーナッドは立っているゼファー前風王に振り向く。

 「ゼファー様、その日偶然にあなた様に助けられ、それが私にとっての奇跡でした。あなた様とアルに出会い、心から『愛』というモノを知り、その後、いくら残酷で屈辱的なことをされたとしても、耐えられました」

 バーナッドの顔には笑みが浮かんでおり、声もいつものように揺れていない。さっきから切ない表情に変わったゼファー前風王からも何も反応しなかった。



 事実を知ったバーナッドとゼファーに比べ、この事実が初耳であるアルタイルは驚きを隠せない。
 
 (なんだと・・・バーナッドとラーカインの父のラーナス前炎王が・・・嘘だろう)

 アルタイルは深く考えると、朝の言葉と婚礼式前夜に、バーナッドが言った妙な言葉を思い出す。


<< 「前に言ったんじゃないですか?私が『よく使われた』と」バーナッドの声は軽蔑ような、切ないような声>>

また、風王に毒を盛られてその時に告げられた言葉。

<<「初めての方は最初が少し辛いですが、だんだん慣れるようになります。私もよく使われたから…昔に…」>>

 
 更に、考えばいつも彼に誇りがないかと聞かれた時に、『最初から無い』とよく悲しい顔をしながら、答える。アルタイルは自分が『変』だと思ったことは、全て残酷な事実と結んでいる。


==7月12日更新==

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あきゅろす。
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