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FATE【BL】
第36話 3頁
<<【アルタイルは自分が守る】>>

 バリアの外で暴れているアルタイルはゼファー前風王の言葉を聞いて、その言葉を繰り返す。

 
 「自分が守る・・・任せてほしい・・・」アルタイルは、初めて知った父上とバーナッドの間の約束まだ把握できず、考え込む。


 約束の内容を告げた後、ゼファー前風王は言い続けた。


 「与は無理な約束を認めないと拒んだけど、君はもしこの約束をせねば、風帝国は受け取らないと。だから、『良い』と答えた。あいにくアルタイルに完全に拒否され、それでも、君は『影』としても守り続けたいと言い出して、与も君の言葉を信じた。だが・・・」


 ここまで言うと、ゼファー前風王の声が、突然冷たい声から怒りに満ちた声に変わった。

 「アルタイルが死んだと聞いた時、君の『約束』はこの程度のモノだと分かった!王にいたる者は『約束』を守らねば、王である資格が無い!」

 前風王は剣をもっとバーナッドの首に近付き、鋭い気配で、バーナッドの肌が斬られ、小さな切り傷から血が流れてくる。


 バーナッドは何も言わずに、そのまま黙って聞いていた。だが、アルタイルの方はバリアの外から叫ぶ。


 「父上。私を守るとはどういう意味ですか?」

 息子の質問を聞き、ゼファー前風王はもう一度アルタイルの方に振り向き、言う。


 「アルタイル。今回を除き、これまでの戦場で、君一度も大怪我をしたことがあったか?」

 
 逆に質問された風王は、しばらく考え、その答えは頭の中に浮かんだ。


(ない・・・一度もなかった・・・)


 当たり前のようなことは、実は裏に理由があるということに気付き、アルタイルは非常に驚き、言葉が詰まった。

 
 確かにこれまでの戦争は援軍として、レイサックの叔父様であるチャナック前水王に何度も戦場に参加した。

 また、自分が一番若いという理由もあり、自ら他帝国の行事に関わりたくなかった。それで、あまり大怪我したことがなかったであろうと勝手に思い込んだ。
  

 しかし、ちゃんと考えてみれば、相手はラーカイン炎王とバーナッド土王、特にラーカインの場合、なぜこれまで彼の命を奪わなかったか。さっきの父上の言葉で、アルタイルはその答えが分かった。


 毎回バーナッドとラーカインと戦場で会うたびに、いつも彼の相手はラーカインではなかった。レイサックの閏年儀式の時もそうであった。


知らないうちにずっと守られていた・・・

だが、それがありがたいことでもなく・・・

むしろ、浅ましく・・・憎たらしく・・・みっともない


 アルタイルは風王になって、自分が一番若かったため、毎日毎晩一生懸命剣術や知識などを学んでいた。一人前になり、王として恥をかかないように頑張っていた。


けれど、実は自分が他の者を守るよりも、ずっと守られていた!!!


情けない!!情けない!!!とアルタイルは心の中に叫ぶ。


 そして、風王は自分の現状を見て、力さえ遣えない。居場所もない。


 こんな歪んだ事実を知ったアルタイルは、もう冷静にいられない。


 「ふざけんな!!バーナッド!お前ずっと俺を見下してきただろう!?余計なことをしやがって!俺、お前に頼んだ覚えがないぃぃ!!!!!」固いバリアを叩きながら、アルタイルは怒鳴り、エメラルド瞳から、怒りの涙が流れ落ちる。



==7月10日更新==

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あきゅろす。
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