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FATE【BL】
第22話 3頁
「いや、何もないよ。アディス、カリナ姉上好き?」アルタイルはわざと他の課題に変わり、誤魔化した。


「はい!とても優しくて、綺麗で好きです。これから毎日会える考えたら、凄く嬉しいです!」王子は素直に答えた。

そう聞いたアルタイルの顔色が曇った。カリナ姫は誰でも愛される人で、風王自身も実妹のように可愛がっている。

しかし、それは『愛』ではない。


「兄上?顔色が悪いです?本当に大丈夫でしょうか?」アディスは心配そうな顔で伺った。


「大丈夫よ。疲れただけ。父上と母上は元気でいらっしゃるか?」風王はまた誤魔化し、親について聞いた。


「明後日の式に来られます。今はいつもの春一(はるいち)に元気でいらっしゃいますよ。兄上の婚礼式を早くみたいって母上が仰った」アディス王子様は笑顔で答えた。


風王になってから、なかなか前風王と前女風王に会えなかったアルタイルは、いつも弟に、父上と母上の事を聞く。


「それで良い。太陽が昇る前に、兄上は出発しなきゃならない。その後一日中風帝国はアディスに任せるので、早く寝ないと。明日途中で寝てしまうよ」

アルタイルはただ一人で考えたかった。だが、それを聞いたアディスは凹んだ。

「僕はそんなに頼れないですか?こう見ても900歳になったんです。婚礼式担当の方も手伝ってくれるし。兄上どうぞご心配なさらずに」


森色の瞳は元気がなくなり、俯いた。小さな王子様は、風王が心配していることは、自分が未熟だと誤解してしまった。


アルタイルは直ぐ弟に説明した。

「誤解しないで。アディスは誰よりも頼れる。だから、明日頼むよ。さぁ、顔を上げなさい」


アルタイルは優しい声で話し、両手で弟の顔を触った。風王の手に落ちたのは柔らかい頬を流れる暖かい涙。

顔を上げると、涙でかすんだ目がアルタイルの目を逸らした。

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