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FATE【BL】
第30話 2頁
 二王はそのまま芝生に座り、レイサックは最初に話を始める。


 「アル、さっきワーヤスはバーナッドが僕を助けたとは本当か?」会談している間に、取り上げられた課題の一つは土王が水王の命を救ったことである。


 「うん」風王の答えは短かった。


 「アイツはなんのつもりだ?僕を助けたから、姫を殺した罪が償えるでも思うか」レイサックは土王に救われたことを恥と思っている。


 「僕もよく分からないんだ」アルタイルは嘘をついた。


 
 バーナッドがレイサックを助けた理由は、罪を償いたいではなく、『彼』のためであるからだとアルタイルは心の中に分かっているのに、言えるわけがない。風王は土王の課題を避ける為に、レイサックの健康状態の課題を取り上げ、誤魔化す。



 「ロス、身体はどう?もう大丈夫か?君は目覚めたばかりだから、無理しない方が良い」風王は心配そうな声で問いかける。



 「僕のこと心配しなくてもいい。ちょっと疲れたが、身体の中から力が湧いてきている。明日でも開戦したいぐらいんだ」レイサックは答えた。



 水王の頭の中には開戦のことしか考えていない。どうしてもカリナ姫の仇である土王と、裏切り者である炎王を復讐すると決心した。命をかけても。




 アルタイルはレイサックの性格はよく知っている。今誰も止められないであろう。だが、そうは絶対させないと風王が思う。アルタイルはずっと黙っていた事実を説明しようとする。


 「ロス。僕は君に言ったはず。開戦する必要はない」



 親友から止め言葉を聞いたレイサックは、別の意味で捉えてしまった。


 「よせ、アル。これ以上僕を納得しても無理だ。君がこの戦争に参加したくなかったら、しなくても良い。君の帝国まで引かれてしまうから」アルタイルに開戦のことを拒むと思いこんだレイサックは拗ねたように言った。



 違う方向で捉えてしまったアルタイルは焦って説明する。


 「何を言う!?戦争の時に僕の帝国が絶対参加することに決まっているんだろう!僕はただこの戦争は必要がないという事実を聞いてほしいだ。その日カリナ姫は・・・」


 『自殺した』という言葉がアルタイルの口から出る前に、レイサックは怒りの限界を超え、アルタイルに言う。



 「もういい!!!!アル。開戦しない理由はない!アイツは姫を殺された仇。それに、僕を・・・」レイサックは直ぐ口を止めた。ディープ・ブルー色の瞳が震えてゆっくりと瞼が下ろされていく。



 アルタイルは、炎帝国にいた時のことを知ってしまった。だが、その後のことは知らないはず。海底で、炎帝国の帝国境で、また、カリナ姫が殺される前夜にも、そして、静心室に入る前夜にも媚薬を盛られ、あんないやらしいことをしたことも・・・・とレイサックの中に炎王と二王きりになった時の映像が繰り返した。



 「ロス?」風王は途中で黙り込んだ最愛の人のあだ名を呼ぶ。


 「何でもない。アル、君がまたくだらないことを言ったから」レイサックは一生懸命誤魔化したが、アルタイルは既に分かっている。



『僕を』に続く言葉は、おそらく『犯した』であろう・・・
もっと正しく言えば、『俺を裏切った』と言った方が良かろう・・・
風王は最愛の人の身体だけではなく心まで、炎王に奪われたと思う。



 アルタイルはいつか必ずラーカインを殺すとずっと考えているが、レイサックと違い、今はまだ相応しい時間ではないことをちゃんと理解している。復讐することは今出来なくても、二千年後でも、一万年後でも、遅いではない。



 だが、レイサックが殺されたら、復讐できたとしても、全てが台無しになる。また、彼の世も終わるとアルタイルが考える。更に、開戦の根拠になっていることは彼のせいである。どうしても、今回の開戦を止めなければならない。



 「ロス、カリナ姫は殺されたんじゃ・・・」アルタイルは決心して、事実を述べる。

 

 残念なことで、短気なレイサックは、アルタイルを最後まで言わせずに、怒鳴り始めた。


 「だから、君が参加したくなかったら、参加しなくても良い。けど、僕を邪魔しないで!!」レイサックは立ち上がり、その場から去ろうとすると、座っているアルタイルに手を掴まえられた。




 「・・・・」アルタイルは無言になった。ただ、最愛の人の手を握っただけ。


 風王はレイサックが今矢のように弓から飛びだしていく。いくら止めようとしても、無理に違いない。今事実を知ったとしても、聞いてくれる気配はない。それは運命というものであろうかとアルタイルが自分と問いかける。



それが『運命』なら、全て君の代わりに受け取る・・・



 アルタイルは深いため息をつき、エメラルドの瞳が最愛の人の目を見詰めながら言う。



 「僕も君に付いていく」と断固として言った。


==3月9日更新==

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