FATE【BL】
第25話 2頁
質問されたバーナッドは何も答えずに、目を閉じたまま座っている。
聞こえているはずの相手の無反応に、アルタイルは少し腹が立ち、ズバリ自分の気持ちを言い出した。
「答えろ!バーナッド!!お前はオレを庇う必要はない!いくらお前がオレを愛しているといっても、オレはお前を全く愛していない!」
忍び込んだことを外の警備兵まで聞こえないように、出した声を抑えたアルタイル。
風王にとって、風が吹ける所ならば、身体を風に変えさせ、忍び込むことは難しいこと出はない。
だが、封印牢に近付けば近付けるほど、風の力も封印されてしまう。突然、警備兵が入ったら、直ぐ風に変えられず、見られる可能性も十分ある。
アルタイルの言葉を聞いたバーナッドは、瞼がゆっくりと開き、紫色の瞳が暖かく立っている風王を覗く。
「それはどうでも良いことです。アルタイル」いつものように低く力強い声。土王は座ったままで、呟いた。
死に対する無関心な答えを聞いたアルタイルは、もっと封印牢に近付き、両手で牢の鉄棒を掴み、強く言う。
「どうでも良いことじゃない!事実を白状すれば、死刑は無効になる。お前はオレの為に死ぬでも言いたいのか!?」
アルタイルの声が様々な気持ちが混ざっている。
怒り、憎み、そして、悩み。
子供の時以来、この者に、一切信頼しないと誓った自分は、徐々に揺れてきた。
バーナッドは鉄棒を掴んでいるアルタイルを見詰め、優しい声で説明する。
「あの夜のことについては誰も知らない限り、そなたはまだあの若水王を愛し続けられます。それに、カリナ姫はもう亡くなりました。私さえ居ねば、そなたの邪魔者は、全てこの世には居ませぬ。それで、そなたにとって絶好な機会でしょう」
土王は昔から死ぬこと等恐れていない。むしろ、二千年以上前に行われた『誓儀式』以来、アルタイルにずっと無視されていたバーナッドは、今自分の死で悩んでいる風王を見るのが、何より最高な瞬間である。
アルタイルはバーナッドが言ったことを聞き、確かにカリナ姫が亡くなったことは、彼が一生結婚しなくても、側近らに説明できる訳もある。また、この者さえこの世に居なければ、前夜のことは永遠の秘密になる。風王も襲われた時、この者を殺したい気持ちもなくはない。
但し…心が騒いでいる。
「お前はオレの為に犠牲になってほしくない」アルタイルは前夜、忘れたはずの記憶がたくさん思い出し、頭が大混乱している。
もしもバーナッドが彼の為に命を捨てたら、風王は一生、この者のことを忘れることが出来なくなると考える。
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