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BSR倉庫
お月見ネタ(石田)



【奥州の秘湯】

「傷が治るっていう温泉が有るんすよ」
という、馬屋番仲間の与吉くんの情報で。遠路はるばる、咲耶は秘湯にやってきた。


※小十郎付きだが、見張りをしてくれています。

『いいか?小十郎…
咲耶の裸みたら、切腹……
いや、俺に報告しr』
なんていう、自らの主の将来を少々心配しつつ。


*****
「…思ったより、硫黄の匂いがしないや…」
咲耶は、薄い布を体に巻きつけて、乳白色の温泉に足を入れた。
熱い、…がちょうど良いぐらいの温度に体を浸からせると、

「くっ、はぁあ〜〜」

オヤジみたいなため息がでる。


「確かに体によさそう…」


片手ですくって、肩にかけてみたりする。
ああ、気持ちがいい。


「…ん、やばい。
眠りそうだ……」


まぶたが重くなってきて、咲耶は岩場に頭を預けてーー



(きれいな月…)

天頂の銀の満月を見つめた。


(…夢の、あの人の髪みたい。)
きれいな、混じり気のない…
白銀の君みたい。



*****
【夢の中】

「…あ、ここは…」
相変わらずの、淋しい野原だが。


前の荒れ地よりは、ススキが生えて夜風に波打っていた。


…と、風に乗って『蛾』がヒラリと空をきる。
視線で追うとーーーー


ススキの原の中で、
『蛾』にたかられる様にーー
見えようによっては、『守られる』ように、
銀髪の彼が眠っていた。



「…っ!」
なんとなく、だが


「離れて…!!」
その『蛾』は不吉な気がして。慌てて追い払った。



「虫嫌い虫嫌い虫嫌い…っ」

「…っ、咲耶……?
っっ!貴様、なんて格好を……!!」


「は?なにって……うぁあっ!?」


まさか、
風呂に入ったままの、
薄い布一枚。


けれど、兄がひとり居る咲耶的には、『どうやってことない』事だ。
「はは、見苦しいものを…」


「ふ、ふざけるな!」


顔を真っ赤にして、私服らしい着流しの一枚をーーー彼は、慌てて私に羽織らせる。

「いいの?」

「…放置をするほうが、なおさら悪い。」



そして彼は、ふと私の髪に触れた。
「…雨でも降ったか?」

「いや、風呂入ってた……クシュッ!!」

湯冷め。
やばい、寒いぞ。夢のくせに!


「…寒いのか」

「…いや、それ以上自分の服を私に寄越さなくて良いからね?君が風邪をひく……よ、」


ガバッと、
彼は、私を抱きすくめた。


「…な、なにしてっ!?」


「…人の肌同士をつけると、温かくなると聞いた…。
どうだ?」

「どう…っていうか…!」


お忘れですか?
私が身につけて居るのは、
薄い布一枚と、着流し羽織ってるだけですよぉおォオ!


「…?おい、咲耶…
顔が赤い「君は変な所で鈍感だな…!」…馬鹿にするな。
私とて、少し緊張している。
…ただ、それ以上に…

お前と居ると、安心するのだ」


彼の鼻先が私の首筋をくすぐる。
「…幼子のようだと、笑うな。触れていると、心が癒えていく気がするのだ。
何かが、満たされていくーーお前、だからだ…
咲耶…」


慈しむように、見た目よりもずっと強い腕に閉じこめられて、息が詰まった。


「……どこにも行くな、そばに居ろ…っ」


「……よしよし」


ぎゅうぎゅう締め付ける、
彼の頭を撫でてやると、泣きそうな声がしてーーー

首筋に、熱が落とされた。
噛みつくような、
悲しそうな、口付けだった。

「…咲耶、
……お前は、私の……」

*****
【奥州の秘湯】


「おい、咲耶大丈夫か!」


「…か、たくらさん。
のぼせました………」


心配そうな顔で、冷や水と布を差し出す片倉さんは、

「…首のそれ、どうした?虫にでも刺されたか?」
と、私の首筋についた赤い痕を不思議がったのだった…。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

片倉さん、役得役得(笑)


いちゃいちゃタイムが短いのは、仕様です。

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