BSR倉庫 Xmas(オクラ) ※パラレル設定 ※オクラは何故か富豪。 ―――――――――― 【オクラとXmas】 きらびやかな社交場に、不釣り合いな私は立っていた。 「馬子にも衣装とはこの事だな」 隣には、満足げに私を見て起伏のないセリフを吐いた毛利元就。 わけあって、彼のパートナーとして。こんな社交場に連れて来られたわけだが…我ながら似合わないと思う。 ドレスとか、化粧とか。 「俯くな、ただでさえ平凡なその顔が更に悪くなる」 元就は、ふんと鼻をならした。 「我のとなりに立つのだ、堂々とするがいい。あの周りの醜女よりは随分と見栄えが良い」 かなり酷いことを、聞こえるように言うから視線が集まった。 「行くぞ、我から離れるな」 自分勝手なエスコートは、流石に手慣れていた。 ***** 『あら、毛利様!ご機嫌よう』 「…あぁ、久方ぶりであったな」 普通にしゃべってるよ。この人、ゲームの人ですよぅ…。 しかし、紳士淑女の方々は優雅に挨拶をしては去る。 「なんだ、その顔は」 元就は、呆れたように私を見た。 「いいたい事があるなら言えば良かろう?」 ふん、と皮肉げに笑う元就はしかしーー「主賓を見つけた」と呟き、私を取り残して挨拶に行った。 不安になったので、壁の花にでもなろうと決めたのに。『この召使いはドレスを着てるのね?』 『やだぁ、なに勘違いしてるの?』 オバサンに絡まれたよ。 香水臭いオバサンは、はちきれそうなボディをキラキラしたドレスで包んでいた。 『毛利様も趣味が悪いわねぇ』 「貴様の、目に公害となる容姿と性格よりは良い」 いつの間にか帰ってきた元就は、冷静な表情のままーー 持っていたシャンパンを、私の周りの女性にかけた。 バシャっと、勢いよく。 「ああ、すまない…この酒は高く美味であると言うのにな。 そこのボーイよ、もう一つ頂けるか」 女性は悲鳴を上げて逃げた。 元就は舌打ちをして、「目立った離れるぞ」と私の手を引いてバルコニーへと逃げた。 ***** 社交場のバルコニーからは、夜景が見えたが、さっぱり感動など出来ない。 何故なら… 「お前は本当に愚鈍だな」 元就が攻めるような口調で、呆れてしまっている。あぁ、情けない。 「泣くな」 ぐい、と瞳に押し付けられた清潔なハンカチに、暫く驚いた。 『え』とそのハンカチと、元就の俯いた顔を見比べていると、何故か赤い顔で彼はーーー抱きしめてきた。 「…我から離れるなと、言ったであろう?嫌な目に逢ったのなら、我にすがり…頼れば良いのだ。お前はそうするべきであったのだ…」 だから、わざわざ…こんな場所に連れてきた。と元就は語った。 「だか、我の思惑どおりには行かぬものだ」 強気だった彼の表情が、一気に弱々しい笑みに変わってしまった。抱きしめたまま、ため息をつく。 「何故、お前は…そのように豪気か。……豪気だから、こそ、我はそなたを見初めたのだがな」 二人しか居ないバルコニーで、人の体温に触れていると…体がもともと一つだったように、熱を共有していた。 楽団の演奏会が始まったらしく、クリスマス曲のジャズが流れ出した。 「……抜け出すか」 聞き返すより、早く。 また強引にーーー私の手をつかんで走り出した。 「次の手は既にうってある」 いつものように、冷淡な表情だが…口元には楽しげな色を見せていた。 長い、階段もエントランスを抜けて−−− 「さぁ、我の日輪(車の名前)に……」 『はい、此処までっ☆』 元就の、高級車の前に黒塗りの長い車に、咲耶のプリントがされている車が止まった。 『痛車?愛故の過ちだってば☆』 「あ、兄上殿…」 『毛利はサンデーだね!はい!』 月刊●ンデーが、元就の顔面に直撃し。超笑顔の兄が、私を車に乗せた。 『うはは、いまどんな気分?』 自分の顔が車体に付いてるかと思うと。恥ずかしく思います…。 ―――――――――― ラストになります。はぁ。 現代兄は無敵の件。 [*前へ][次へ#] [戻る] |