霧の國 A 正直言って、名前が違うなんて知った事か。と藍武は思ったが「あぁ、ごめんね」と笑いかけると真代は満足げに頷いた。 ーーと、 空気が、震えた。 「…なに、地震?」 それぐらいに、強烈な振動に二人は顔を見合わせる。定期的に続くその振動に、真代は「足音?」と首を傾げた。 そんな、馬鹿なことあるか。と藍武は言ってやりたくなったのだがーーー先ほどから、真っ白な視界の中にある『変化』が起こっていた。 小さな、ビル程度の大きさの影がゆっくりと近づいて来るではないか。しかもーーーなにやら、生臭い獣臭がする。 これは、ただの勘なのだがーー。 「ねぇ、マヨちゃん」 「……まし、」 「…本当に、死ぬかもよ」 その言葉と同時に。 無数の、巨大なタコの足のようなものがーーーー鞭の如く、二人へと伸びて縛り上げてしまった。 悲鳴を上げる間もなく。 二人は絶句する。 自分たちを縛るタコの足を持つ、『怪物』はーーー熊のような上半身をもっていたのだ。 そして、瞬時に理解する。 ここは、『地球』じゃないーーー!! 戻る*進む♯ [戻る] |