霧の國 B 【藍武視点】 ふと、だったけど。 嫌な予感がした。 この馬鹿デカい塔から落下しているのも十分異常事態だけど、一緒に落ちて行くはずのマヨちゃんが何か叫んで、 (確か、もう一度俺に告白したいとか…チャンスを下さいとか、そんな恥ずかしい感じの内容的で) まぁともかく、 マヨちゃんは何かを召還した訳だった。俺たちと同じ位の年頃の、まるで作りものの人間みたいな奴が光り輝いて現れた。 それと同時に、俺たちの落下速度が遅くなって無重力に近い状態になる。 もちろん、驚きはしたけど既に異常事態なので反応は出来なかったけども。 『君も、ぼくのお願いを聞くんだよ?真代…』 とかほざきやがった。 いきなり出てきてなんなの!?お前何マヨちゃん呼び捨てにしてんだよ、お願い聞くとかなんだそれ俺も欲しいわその特権…! 呼び捨てされたのに、マヨちゃんはそいつを見上げながら『氷樹…さん?』と呟いた、 って… 「こいつ?!こいつが氷樹?!あの氷の木みたいな奴が…」 そう叫ぶと、氷樹が振り向いて俺を品定めするように見つめた。 『気安く呼ぶな』 「はぁっ!?」 『……僕の真代を傷付けた奴なんて知らない』 そう呟いて、氷樹はその腕にマヨちゃんを抱きしめ、てんじゃねぇよ馬鹿!破廉恥!破廉恥すぎ!慎めよ! マヨちゃんは真っ青な顔で慌てて首を降る。 え、何その顔。 『だから、君は落ちればいい』 「――――っ!!?」 がくん、ともう一度重量に晒された。 マヨちゃんが泣きそうな顔でこっちを見下ろしていた。 「そ、うし…くん…っ!」 なに、それ。 見捨てられたの、 やっぱり? ぐるぐると、頭と足が天と地を指して回る。 マヨちゃんはもう見えない、見たくない、 『助けてあげる、お兄ちゃん』 「…っヘビ…!」 ものすごい速さで、空を飛んできた巨大な真っ白な蛇が俺を絡めて落下を止めた。 あの、キリムコウの女の子だろう。 『大丈夫?お兄ちゃん』 「………う、ぇ」 情けない、 『お兄ちゃん…?』 惨めで、 「もういいよ、キリムコウ…俺を連れて行って。アンタらは俺を必要にしてるんでしょ…?」 『…それは…』 お願い、だから。 俺を求めて。 『まだ、出来ないよ……今は話に来たの、だから…戻ろうお兄ちゃん?』 「…っ!なんでさ!俺ばっか!俺ばっか損してる…!勝手に連れてきたクセに!勝手に好きになったクセに!勝手に生んだクセに!なんで、なんで、なん、」 『お兄ちゃん、レミィより子供みたい』 掠れた声で泣き叫んでいた俺の耳に、呆れたみたいなキリムコウの女の子の声が聞こえて。 それがもっと恥ずかしくなって。 唇をかみしめた。 戻る*進む♯ [戻る] |