霧の國 白昼無双 真っ白だ。 何処もかしこも真っ白…。 ただ、右手に何か感触があったので。真代は『それ』を引っ張ってみた。 「…なに、してんの」 よく通る、綺麗な声に。真代は慌てて覚醒した。しかし、相変わらず視界は真っ白なので「夢かな」と思わず口に出してしまう。 「夢、ねぇ…」 クスクス、と笑う声が聞こえたかと思うと。 グイッと、体が何かに引き寄せられた。 眼前に整った顔がーーもとい、藍武くんの悪戯めいた表情の顔が、そこにあった。 頭の中が、沸騰する。 「…ねぇ、マヨちゃん。夢なの?」 楽しそうな声で、藍武くんは囁く。反対に真代はパニックになっていた。 「ゆ、夢です…!藍武くんが、私のこんな近くに居るわけ、」 そこで、真代は舌を噛んでしまった。 痛い。痛くて涙が滲む。藍武くんがケラケラ笑いながら「大丈夫?」なんて言ってくれるけれどーーこの痛みによって、夢じゃない事が確定してしまった。さっ、と血の気が引いていく。 「…死んだ、の……?」 戻る*進む♯ [戻る] |