霧の國
C
【藍武視点】
目の前で、天戯が救護ロボットに収容されて運ばれていく。
伊蕗が、何やら連絡をとってあの白い奴らを捕獲…というよりどうにか話そうとしている。
マヨちゃんが、普通にあの白い奴と話している。
なんで、
なんで、
「あいつら…なんなんだよ、」
手の中で、伸びきったカッターナイフがゆらゆら揺れている。そう、僕は戦うつもりだったさ。なのに、あの化け物が人間の姿になった。
人間を、切れるわけない。
それに、なんで。
僕をほおって話が進んでる訳?ちょっとおかしいんじゃないの?ねぇマヨちゃん?
そこに、僕が居るべきだよね?
スルスル、と何かが擦れる音がして咄嗟に振り返った。
「…っひ!」
白い巨大な蛇が、そこに佇んでいるではないか!
「来るな…っ!来るなよ…っ、」
『…お兄ちゃん、私…』
「来るなぁああっ!」
ひゅん、と手からカッターナイフが飛んだ。
しまった、と思っても遅くて。
蛇の腹に、少し当たって。
ポキン、とカッターナイフは折れてしまった。
『痛い…』
「……」
悲しむような、少女の声に呆然としていると。目の前で、蛇は光輝くと10歳かそこらの少女の姿になった。人と違うのは、何もかもが真っ白という事と、耳のあるべき場所には白い翼が生えていた事だろうか。
ひどく整った顔の少女は、悲しげに表情を歪ませた。
「……痛ィ、悲しィ…呼んだのに、私が…」
喋る彼女は、確かに人間に見える。しかし僕には分かる。彼らは敵だ、化け物だ、だから。
「人間の真似して、いい気になるなよ…!お前らは…キリムコウっていう化け物なんだろ…っ、痛いなんて言っても無駄だよ!」
「…化け、もの…?お兄ちゃん、わかってなィ…ね。
お兄ちゃんは、私が呼んだ『対話者』…だから、お兄ちゃんは…」
「黙ってよ………」
もうやだ。
僕はうずくまって、頭を抱えた。
言葉を理解したくない。
「私の、仲間なのに……」
頼むから、黙って。
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