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霧の國
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奇しくも、彼らの声は重なっていた。もちろん壁の向こうではあったのだが、彼らはよく似た表情をしていた。
恐怖と、拒絶。


渡界する前は、見えなかった共通点が垣間見えた瞬間。

真代はサバイバルナイフを天戯へと、
藍武はカッターナイフを伊蕗へと向けていた。



天戯も伊蕗も驚いたように目を見開き困惑したような表情を浮かべた。
その刹那、異邦人である彼らは僅かに歓喜した。


大丈夫だ!武器があれば大丈夫!自己防衛だ!だから、


しかし、それは『平和』である国ならの話だという事に彼らはまた数秒で気がついた。


天戯の胸元から、伊蕗の腰から。
ドラマで映画でみたような、とても分かり易い死の形が現れた。

天戯が、いたずらをした子供を叱るように僅かに微笑む。
ああ、知らなかったのか?今度やったら本当に怒るからな?


銃を突きつけられる、恐怖なんて日本人たる真代たちには一生知り得ないものだったかも知れない。

けど、今。


目の前の人間に、私の命が握られている。(実は日常においてもそのような場合はいくつもあるのだが)

目をそらせない。死だ。


そしてまた奇しくも、天戯と伊蕗の声は重なる事になる。


*****

「「捨てろ(捨てなさい)」」

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あきゅろす。
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