霧の國 狂共通点 同じような、密室空間が出来上がっていた。 ひとりは異邦人。 ひとりは追跡者。 たったそれだけの共通点。 の、ハズだった。 ***** 「なぁ、真代……女って俺たちとどう違うんだ?」 子供が親に尋ねるような声で、天戯は真代を眺める。そして真代が的確な答えを与える前に、天戯の手が動いて−−−ドサッと床に仰向けにされた。 決して、色事的な意味合いは無い。 「なぁ」 しかし、体格の良い男性が両腕で逃げ場を塞ぎ、まるで覆い被さるような体勢になっているのだから、真代の脳裏にはドラマや小説で見たようなシーンが思い出された。 そして、恐怖心が一瞬で膨れ上がってーーー 【ほぼ同時刻】 「そんな目で俺を見るなっ」 一見シリアスなシーンに見えなくもない台詞だが、端からみたらじゃれあっているようにしか見えない。 「これが、恋!あぁあなんて素晴らしいのでしょうか!」 伊蕗が息を荒くして藍武に寄っていく。しかし藍武は必死の抵抗を見せた。 「やめっ!俺は男っ!くんなっ」 本気で嫌がっている藍武に、伊蕗は残念そうに腕を下ろし…冷静になろうと努めた。 「そう、ですね…アナタは私達と同じ性別みたいです(でも愛に性別なんて関係ないんですけど)」 「大有りだちくしょう。なんだよ見た目で分かんねぇかよ」 因みに藍武は、整ってはいるが凛々しい顔立ちである。 しかし伊蕗は、揚げ足を取るように「ええ、分かりません」とワザとらしく肩をすくめて、 「では、あの少女のように胸元でもさらけ出してみますか」 と下心ありありでまた藍武にじゃれようとしたが、服に触れた途端、藍武の顔色が真っ青になりーーー ***** 「「触らないで(触るな)!」」 戻る*進む♯ [戻る] |