霧の國 A 【藍武視点】 僭越ながら、説明をしたいと思う。 あの時、氷が俺達に迫って来てーーちょうど当たりそうだったから左右に散った訳だ。 それが大きなミステイク… ロボット軍団は、氷の中に閉じ込められた。 追っ手の二人も散り散りになった。 俺とマヨちゃんも散り散りになった。 それなら、まぁ、「探しに行かなきゃ」で済むんだけど、 俺の隣には、何故か糸目がいた。 「……」 「…どうされました?」 にっこりと笑みを浮かべているコイツは、黒い銃をこれ見よがしにクルクル回している。 一時休戦。 命が大切だと思います。 「…しかし、居住区を突き抜けて来るなんて。かつて無い暴挙です…」 感心するように、男は辺りの壁を巻き込んだ氷の壁を触って溜め息をついた。 「修繕するにしろ、工場への供給が滞ってないかが懸念されますね。可能性は大いにありますし、あぁ自動修復システムに氷に対する行動を組み込んでからだと、」 「一人で楽しんでいる所悪いけど」 「楽しい訳ないでしょう。因みにアナタ方に発砲しなかったのは、単に流れ弾がパイプに当たらないか心配だったからですよ。『工場』(ファクトリー)に何かあれば明日にでも『タワー』はヤツらに占拠されますから」 長いセリフを、すらすらと喋るコイツに若干引いた。 「あんたらの事情はともあれ、打開策を考えてよ。連絡手段とか無いの」 「口が達者ですね、君は。連絡手段は無くは無いんですが……」 考え込むように、口元に手をやる彼は何故か俺を見て顔を赤らめた。…え、赤らめた? 彼は、わざとらしく咳をする。 「つ、吊り橋効果って知っていますか…!きっとそれです、多分それのはずですが、何でしょうこの胸の高鳴りは」 「そんな一部の女性読者が望む展開に持って行くつもりは無い!」 あぁ、どうしよう。 貞操の危機だろうか。 戻る*進む♯ [戻る] |