霧の國 C 【真代視点】 息を止めて、祈っていた。 早く早く早く、あの人達が行きますように。 藍武くんが、無事でありますように。 膝を抱えて祈る私にーーー、影がかかる。 「…見つけた」 低い、男性の声に私は弾かれたように見上げた。 格好の良い、長身の男性が壁に片手をついて笑んでいた。 狼が笑っているような、凶悪さを持ち合わせた笑顔に。私は泣きそうになった。 「伊蕗、もう一匹居るじゃねぇか」 伊蕗さんとは、多分あのロボットを引き連れている人だろう。私は髪を捕まれて、立ち上がりーーーのろのろと歩いた。 そして、顔を覗き込まれる。 「お前…女か?」 女だから、なんだというのか。泣き出してしまいたい。 珍しいものを見るような目で、私を見ないでほしい。 そう思ったのも束の間、男は私の制服に手を掛けてーーー乱暴に引きちぎった。 「……っぁ、」 下着が露わになる。 キャミソールが、まだ有るがあまり意味を持たない。 男は食い入るように、私を見つめてーーー触れようと、した。 「ーーーいやっ!」 生理的に、悪寒がした。恥ずかしさも、悔しさも膨れ上がって。私はついに泣き出した。 藍武くんの怒号が響く。 「触ってんじゃねぇよっ!」 拘束されたまま、藍武くんは周りのロボットをなぎ倒した。 パニック状態の私の元へ辿り着いて、服を裂いた男を殴りつけーーー空振りをした。 男は、さっと身を引いたのだ。 藍武くんが悪態をついて、再び殴りつけようとした時に。 『もう少し、下がっておいで』 「…え」 声が、脳に響いたかと思うと。私はとっさに、藍武くんのシャツを掴んでーー後退した。 そして、異変は起きた。 戻る*進む♯ [戻る] |