霧の國 意外存外 【真代視点】 「だ、抱きしめていいですか!」 男は、キラキラとした瞳で私を見つめてきた。若干、いやかなり…引いた事もない。え、何この人…。 でも、中学生の頃はよく女の子同士で抱きついたりとかしたし。 「まぁ、抱きしめられるくらいなら…どうぞ」 そう、許しを出すと男は『ふにゃ』と笑ってその大きな体でぶつかってきた。ギュッと腕が回る。 「真代さんっ!どうしよう嬉しいっ!」 「はぁ…」 嬉しい、嬉しいと繰り返す彼を見つめていた藍武くんが「大型犬みたい」と呟いた。うん、と私も同意した。 満足したのか、彼はパッと手を離して「大丈夫?」と尋ねてきた。 「ごめんね、オレ…女の子に初めて触ったよ」 「…はい?」 ふんわりと笑う男は……よく見ると、まだ少年のような顔立ちだが背は大きい。真代が悩んでいると、藍武くんが「あんた歳は」と聞いた。 「オレ?15歳だけど…あ、ごめん背が大きいから、もう少し大人に見られるんだ。」 と、頭を掻く。 「う、嘘…俺より年下なんて…180くらいあるのに…」 藍武くんは、何やらショックを受けているらしいが、男…もとい、少年はふにゃりと笑った。 「オレ、夕雨(ゆう)っていいます!真代さんはどこから来たんですか!」 夕雨は、キラキラとした瞳で真代を見る。しかし真代は口を閉ざしたまま、意見を求めるように藍武を見た。 藍武くんは、肩をすくめてーー、 「実は俺たち、この街の外から来たんだ」 と、暴露した。 夕雨は、キョトンとしてーー、 「でも、真代さんも藍武さんも髪が白くないじゃないですか」 と首を傾げた。 戻る*進む♯ [戻る] |