霧の國 霧中逃避 【藍武視点】 錆びた鉄板の間を走っていく。工場地帯って、こんな感じだよなぁと自分の家の近くの工場を思い出す。 ちらっと、見れば錆びついたパイプが幾つも伸び、金網の向こうにはモーターのような機械が見えた。 「(これが、いわゆる異世界トリップだとしたら…)」 なんでこんな目に逢うんだよ、と藍武は自問した。 確か、クラスメートの女子が『自作小説』だとサイトを教えてきたときにあらかた読んだ。 トリップ主人公は、元々そのトリップ先の異世界の住人だったとか。なんかの生まれ変わりとか。 とにかく、もう少し優遇されてもいいじゃないか! 『怪物』に襲われて、助けが来た辺りに、『あー、お約束だな』なんて考えてた自分を叱咤したい。散々だ。命の危機だ。 体は痛いし、疲れるし。 しかも、一緒にトリップする相手がまさかのマヨちゃんだ。 正直、あまり関わりが無いし喋った事は数える程しかない。なんで、コイツなのかなぁ。 『お約束』で考えても、さっぱり訳が思いつかない。 「(そろそろ、協力者出て来いよ…!)」 舌打ちをすると、マヨちゃんが気遣わしげに俺を見た。 体裁整えんのも面倒なので、とりあえずスルーした。 そして、右に通路を曲がった時。 「おわ、いきなり何だよぉ」 作業着の青年に、ぶつかって。俺は多分、すごい凶悪面してーーー『協力者』になり得るコイツを、利用する方法を考えていた。 進む♯ [戻る] |