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貧乏学生の本田があらわれた!
ギルは二度寝した



菊が目覚めたのは翌朝の事でした。
鼻の奥には、ねっとりとした臭みが居座っていましたが窓を開けると少しはマシになります。

夜干しされた洗濯物を取り込み、忍びないながらもシャワーを借りました。ギルも床に転がっていますが、戸締りはきちんとされて居るのでおそらく菊よりは持ち堪えたのでしょう。


「あ…着替え」

脱いで、シャワーを浴びてから思い出しましたがもう気にしません。
早く大学にいかなくてはいけないですし、…まぁ上着を着回すことは良くある事でしょう。気にしたら負けです。

朝シャンから帰ってくると、ギルがげっそりしながらコーヒーを啜っていました。

「お、はようございます…」

「…おう」

どうやら低血圧なのか、だいぶテンションが低いです。菊の姿を確認すると、舌打ちをしながらフラフラと別の部屋へ消えてしまいました。

疑問は残りますが、とにかく朝ごはんにしましょう。






風呂から上がったギルは、菊の日本の朝ごはんといえばこれと言わんばかりのコースに舌鼓をうちました。

「…ふぁー、生き返るぜー…」
「お口に合いましたでしょうか」

「ま、俺様の次の次の次くらいに上手いんじゃねーの?…あと、これな」

乱暴に渡されたのは、ギルの私服…の中でも普段着に近いものでした。

「そんな!申し訳…」
「それ辞めろよ、必要だからしてんだ」

ため息をつき、ギルは伸びをします。
遠い目で、やっぱり体調が悪そうに見えますが菊が尋ねると「なんでもねぇよ」とそっぽを向きました。
ううん、猫みたいですね。

時間が迫って来たので、菊は慌ただしく用意を始めます。



「これ、鍵な」
「はい!………えっ」
「帰ってくる時にちょうど入れ違いになったら困るだろーがよ」


そうですけど…と、菊はしぶしぶ鍵を受け取りました。これで毎朝ニンジャみたいに通学せずに済みそうですね。

「じゃ、行って来い」

ひらひらとテンションの低いまま、ギルは手を振ります。


「……はい、行って参ります」

ちょっとまだ納得してないようですが、菊も答えて足早に大学へと向かうようでした。



見送った後、再び布団に倒れこみ二度寝を決め込んだギルでしたが昨日バックレたせいか携帯端末にはホスト仲間からの電話とメールが責めるように並んでいます。

うっ、と顔を顰めてから。
とりあえず電源を落とします。



「…俺、なにしてんだろうなー…」

ごん、と床に頭を打ったので布団の上に転がりながら戻ります。

菊が居なくなって、フランシスから電話を貰うまでギルは本当に焦って探し回っていました。本人を前に、心配しただの頑張って探してただの言うのはなんとなく照れ臭く。
なんでもないような顔で過ごしていましたが、朝、ちゃんと菊が居てギルはすごく安心したのです。


「かっこよすギルぜー…」


ちょっと自己陶酔気味でしたが、ギルは真剣でした。菊は忘れてしまっているようですが、ギルは在校中に菊と話した事が有りました。何気無い、挨拶みたいなものでしたが…

それでも、大事な記憶の一部になるには申し分ない記憶でした。



世間一般的に、そういうのってなんて言うのやらと思うが早いか、ギルは再び眠りにつきました。

平和な朝ですね。





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