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貧乏学生の本田があらわれた!
菊は土下座した
半ば混乱しながら、菊は全力で土下座を繰り出し感謝と謝罪を述べ始めます。


「せせせ先日は、行き倒れていたところを助けて頂きまことに有難うございました…!見ず知らずのわたしに施しを……」

「あ、やっぱ忘れてんのか」

あっけらかんと、ギルはアメリカンドックを食べながら土下座の菊を見下ろしました。

「同じ高校だったろ、面識はねーだろうけど」
「え……、そうだったのですか?」
「ま、俺様もヤンチャだったからなー…同学年じゃねぇよ?
あとその格好ヤメろ!店員が見てんだろ!」

「あ、えと…すみません」

立ち上がった菊に、ギルはフルフェイスを被して「乗れ」と指示しました。菊は、あの悪魔のようなデザインのバイクに跨り神妙な顔でまたギルのアパートに帰ってくる事になったのでした。


断りを入れて、早くネカフェに行こうとする菊でしたがギルはマイペースで「帰ったぜー…」とさっさと鍵を開けて部屋に上がってしまいます。
菊が「おじゃまします」と呟くと「おかえり」とギルは反射的にそう返しました。
途端にバツの悪そうな顔をして、頭を掻きます。

「前によ、弟と二人暮らししてたからかどうにも習慣みたいになってんぜ…」

「そうだったのですね…」

なるほど、この面倒見の良さというか兄貴肌なのはそういう理由だったのかと菊はひとりで納得しました。


さて、問題はこれからです。



「必ず、お金はお返しいたしますので…っ!これ以上貴方に……えっと」

「んあ?ギルでいい」

「ギルさん、ですね。畏まりました……ギルさんにご迷惑お掛け出来ません!!」

「ギルで良いって言ってんのによー…」

ギルはそう言いながら、洗濯機を開き手早く服や下着を掛けていきます。見ているのも忍びないので、菊もタオルや靴下を空いてる所に掛けました。

「ん、あんがとな」

「いえいえ……ではなく!その、助けて頂いた事は本当に感謝しております、ありがとうございました…お礼は必ず致します、必要なら一筆書かせて頂きます。

ですが、私とはもう関わりにならないでください…」

「知らねーよ」

「えっ?!」



ギルが座布団を並べて、座るように目で指し示したので菊はそれに従いきちんと正座をします。
ギルは、胡座をかいて座り不機嫌なのを隠さずに話し始めました。

「誰もお前に、世話したから金払えなんて言ってねぇし!そもそも行き倒れてたやつから返して貰おうなんて思ってねぇよ、だからそれはチャラだ。いいな?」

疑問系のはずですが、彼の目は「文句あんのか」と言っています。空気を読むスキルを発動した菊は声もなく、しかし首を振りました。

「これからの事も俺様が決める事だろうがよ」

「だ…だめです」

「じゃあ、今すぐ飯代と宿代払え」

さっきと言ってること違うじゃないですかー!!?

と、菊は思いましたが声にはだしません。そんな雰囲気ではないのです。
コンコン、と隣の部屋から「うるさい」という意味でノックが有りましたが二人には聞こえていません。


「…そ、それは」
「じゃあ駄目だな!よし寝ろ」

「それでは迷惑になります…!」
「だから、それを決めるのも俺様だっって言ってんだろーが!!」


赤い目で睨まれると、結構迫力があります。しかし菊は引かないつもりでした。

ゴンゴン、とまた壁が鳴ります。
気持ち音が鈍くなっています。


二人はやはり気付かずに、言い争いを続けーーーー壁のノックも負けじと大きくなり、


どこぉおおん!!








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