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貧乏学生の本田があらわれた!
アントーニョが帰る

さて、営業時間を過ぎたCLUB【悪YOU】ではフランシスとアントーニョが二人で片付けをしていましたが、進行状況は悪いです。

「もーあかん、眠い」
「ちょっとお!頼むからグラス割るなよ、それ新調したやつなんだから……ん?」

モチベーションの下がる二人は、閉店したはずの扉が開くのを見て驚きましたが、現れた人物にフランシスは眉を上げ、アントーニョは不機嫌になりました。

「…ふん、なんだこのギラギラした内装は。目に悪りぃし悪趣味だ、お前の趣味だろフランシス?」

「よ、お坊ちゃん久しぶり。
つか文句言うなら出て行きなさいよね!失礼しちゃうわー」

扉を開けて入ってきたのは、フランシス達と幼馴染のアーサーであった。アーサーと菊は高校で同級生であったがその事をフランシス達はまだ知らない。

アーサーは、仕事帰りなのかシンプルなスーツ姿でちらりとアントーニョを見て直ぐにフランシスに視線を戻してカウンター席へと向かっていく。
アントーニョがあからさまに嫌な顔をしたが、アーサーは我関せずといった様子で「フランシス、紅茶」と手をひらひらとさせた。

「おいおい、うちはカフェじゃないって言ったでしょー?あるにはあるけど、ティーバッグでいいの?」

「…はぁ?ティーバッグ?無いなら仕方ねぇなぁ……我慢して飲んでやるよ。
それと、紅茶置いてないなんてレディに呆れられるだろうから、今度お勧めの紅茶缶持って来てやる。
か、勘違いすんなよ!俺が紅茶飲みたい時に無いのが困るからであって…」

「あーはいはい、分かりました!んで、坊っちゃんはその趣味の合わない店に何の用?」

フランシスは紅茶の準備をしながら、旧友のアーサーとさらに不機嫌になっていくアントーニョを見比べながらハラハラしていました。
そんな様子に気付いたのか、アントーニョが、にっこりと笑います。

「…フランシス、悪いけど俺もう帰らせて貰うわぁ!誰とは言わへんけど、文句あるなら自分で最初から用意して来ればええと思ってるで。そんで閉店後なんやからさっさと帰れや腐れ眉毛。
じゃ、Adios」

「…うん、お疲れ…なんかコイツのせいでゴメンね〜」

ピリピリし出したアントーニョを直ぐ帰らせてやれば良かった…と後悔しながら、フランシスはいつものトーンで送り出します。

「うん!ええよええよ!フランシスはなんも悪くないで!フランシス、は」

「……」

アントーニョとアーサーの間で静かに視線が交わりましたが、アーサーは特に何も反応せず、アントーニョが睨んで去るまで何も言いませんでした。


アントーニョが視界から消えると、アーサーは頭を抱えてため息をつきます。

「おい、アイツまだ根に持ってんのかよ…何年前の話だと思ってんだ」

「うーん、お兄さんは首突っ込みたくないからパス!ちなみにあの子が怒ったら店壊されちゃうから、今度はちゃんと連絡しろよ。鉢合わせないようにしてやるから」

アントーニョの前では余裕ぶっていたようですが、アーサーも少し気にしていたようです。
フランシスの申し出に、彼は目をそらしながら「…Thanks.」と呟いたのでひとまずフランシスは良しとしました。

「で?どうしたの?」

「…あぁ、ちょっと商談でこっちに来てな。こんな時間になっちまって、ビジネスホテルも取れなかったから仕方なく、な」

「ふぅん、お仕事お疲れ様」

疲れたように眉間を抑えるアーサーの目の前に、きちんとソーサーに乗ったカップと、可愛らしいティーポットが出て来てアーサーは驚いたようでした。

「…なんだよ、お前、まだそんなの使ってんのかよ。もっと良いもの買ってやるのに、物持ちいいんだな意外と」

「いいの、お兄さんこれが気に入ってるんだからさ〜」

何を隠そうアーサーがフランシスに昔贈ったティーセットが出てきたので、アーサーは少し照れながら紅茶を注ぎます。

フランシスの将来設計的には、いつかカフェをやりたいとも考えているようで、密かにそれを楽しみにしているアーサーだったのでした。



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あきゅろす。
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