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貧乏学生の本田があらわれた!
アルの笑みの先

「…うん、ちょっと取り乱しちゃったみたい。びっくりさせちゃったね?」

「いえ、お気になさらずに。最近の若い子はよくくっついて来ますので、耐性はつきましたよ」

よくくっついて来る、でフェリシアーノくんやアルフレッドを思い出して思わず笑みが零れます。

「…………へぇ?」

そんな菊を見てまたイヴァンから、黒い何かが飛んできたような気がしますが、見ないふりをしました。なんだかイヴァンを見ているとアルフレッドを思い出します。
そういえば、彼との約束をだいぶ先延ばしにして居ましたが大丈夫…ですかね、彼との会話はたまに不穏な空気になりますし。

と、そんな菊の心を察知したのか菊のケータイがメール着信を知らせました。

「…おや、噂をすれば」

アルフレッドから、焼肉屋さんの日取り提案が来て居ますがバイトの日とことごとく被っています。
それに、そもそも外食するお金も危ういです。

「…うむむ、今は余裕がないですね」

世知辛いですが、お金大事です。
…もっと、ちゃんとしなくてはいけません。本当はギルの家にお世話になっている現状すら心苦しくて、学費も、親代わりの王耀にも迷惑をかけていますし、
あぁ、本当にどうしたら。
誰にも迷惑を掛けずに、一人で生きていけるのでしょうか。やっぱりお金?

「…そういえば」

バイト仲間の鈴木くんが、良いバイトを紹介してくれるとか言ってませんでしたっけ

「おーい、本田くん?」

そうですよ、ちょっと怪しいですけど、話を聞くくらい良いじゃないですか。嫌ならやらなければ良いのですし、肉体労働は自信が…

「…ていっ」

「うわぁあぁぁあ!」

考えこんでいた菊は、呆気なくイヴァンに押し倒されてしましました。
冗談とは分かって居ながらも、やはりびっくりはします。イヴァンさんイケメンですし。

「もう、ちゃんと僕の話聞いてよー」

「…す、すみませんイヴァンさん」

「ブツブツ一人で言うから怖かったよーもう!」

ポコポコとなぜか目に見える何かを飛ばしながら、イヴァンは頬を膨らませました。

「…で、本田くん今アルフレッドって言った?」

「え、口に出ていましたか…?そうですね、彼はその、友じ……知人ですかね?」

「知人、ねぇ」

興味なそうながら、少し敵意を含んだ眼で、イヴァンはちらりと菊がよく大学に着ていく上着と、コンセントを見てから笑みを深くしました。
あっさり菊の上から退いて、迷いなく壁に向かって歩いて行くイヴァンの背中を菊はただ、見つめていました。

「…僕もね、知り合いなんだよアルフレッド・F・ジョーンズ!
彼ってさ、見てると元気で明るくて何でも持ってそうな顔してるのに」

スッ、と壁に掛けられた菊の上着の襟に手を伸ばしたイヴァンの手には小さな機械が握られています。
それは何か、と菊が尋ねる前にイヴァンは楽しそうに笑いながら

「なんでも欲しがる奴は、プチってしたくなっちゃうんだ〜」

ぐしゃり、とその小さな機械を潰しました。


****


「…ッ!はは、さすがに目敏いんだぞ」

苦い顔をしながら笑うアルフレッドは、自室でヘッドホンをして居ましたが今はノイズしか聞こえて来ません。これは、盗聴器も発信機も全部おじゃんにされてしまいそうですね。

「…これじゃあ、菊を”守れない”じゃないか!これは早急に対策が必要なんだぞ、そうだろマシュー?」

「…アル……」

そばに控えていたマシューに、アルフレッドは笑いかけました。しかしマシューは浮かない顔で、よく似た顔の兄弟を見つめるのでした。




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