貧乏学生の本田があらわれた!
ギルが苦労性
菊が帰った後、クラブ【悪YOU】の店先でギルは客の見送りをしていた。ギルを指名するのはマダムから年下まで様々だが、甘やかされたいというよりも自分の話を聞いて欲しい女性が多いようだ。アメと鞭の使い分けが上手いらしいギルを見て、菊は密かに「師匠」と呼んでいる事をギル本人はまだ知らない。
「今日も帰り遅くなっちまうなぁ…」
人通りの多い夜の街を眺めながら、しみじみとギルは思う。
ふと、人混みの中でこちらを見ている女性を見つけた。
いつかの、ギルに水をかけて逃げ帰るように店を去った少女である。
人混みのせいか、少女の顔を伺い知る事は出来ない。
「…こりねぇなぁ」
「……待っててね、ギルさん。目を覚まさせてあげるからね」
意味のわからない事を言う。
その目は、此方を見ている筈なのにギルを写しては居ない。
にっこりと笑って、少女は大きな人混みの中に姿を消してしまった。
「…最近、ツイてねーわ本当に」
嫌な予感はしつつも、自分に降りかかるなら問題ないぜとギルは思いました。ただ、家で帰りを待っているであろう菊を思うと頭の端で不安が生まれ、ギルは疲れたように息をつきました。
「って訳で帰るぜ」
「うん?寝言は寝て良いなさいよ」
店内に戻ったギルは、いつも通りにフランシスに掛け合います。しかしフランシスも譲れません。
「あ、お帰りぃ!そういや自分、また居候拾ったって聞いたでー!めっちゃ良い人やん」
二人が話しているのを見てか、アントーニョが楽しそうに会話に入ってきました。
しかし、ギルもフランシスも楽しげではありません。
「菊ちゃん心配なのはわかるけどさぁ…仕事しなきゃ養えないだろ?ギブアンドテイク大事でしょ?
また同居人増えたなら尚更さぁ…」
「だから心配なんだよ!ぜってーアイツ菊となんかある感じがすんのに菊はいつも通りだし、変な客が付くわ、菊は最近俺に隠し事してるわでイライラすんぜ全く!」
「同居人ってまた男なん?おまっ、本当にコッチと違うん?」
アントーニョがからかうように笑うと、ギルから重ための拳が飛んで来て危うく商売道具の顔を傷付けられるところでした。
「マジで?菊ちゃんとその居候二人きりとかヤバいんじゃないの?」
イライラしながらカウンターに突っ伏したギルを煽るように、フランシスがそう言いましたが煽られた本人は不思議そうに眉を顰めて、不可解なものを見る目をしました。
「…は?お前ら何言ってんだよ。
あいつら男だぞ、防犯的には寧ろ助かるぜー!ま、俺様が家に居りゃ蟻の子一匹通さねぇがな!」
「えー、コイツまじで言っとるの?」
ギルが意外とピュアで納得のいかないアントーニョがフランシスに抗議するようにギルを指差し、笑いながらも疑うような目をしています。
「うーん、ちょいまち。
…なー、ギルベルト?攻めの反対は?」
「守りか?」
「はいセーフ!やだこの子ノンケ!?」
「嘘やろ!コイツん家にホモビあったの見たで……ま、まさか弟のか」
アントーニョとフランシスがガタガタ震えているのを他所に、ギルはボーッと今日の夕飯は何かなぁ、なんて考えていました。
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