貧乏学生の本田があらわれた!
アルはヒーローだ
「明日も朝早いんでしょ?早く寝ようよー」
「ちょっとまてイヴァン、お前は玄関だ」
何が悲しくて男三人で川の字作って寝なきゃならんのだ。ちなみにイヴァンは真ん中に陣取っていたため、川の字というか小の字みたいになるだろうか。
「ギルベルトくん、僕、お客さんだよ?」
「それもそうですね…ギルさん、よろしければ私が玄関で寝ます」
菊の申し出に、
イヴァンはにっこりと「じゃあ、本田くんと玄関で寝ようかなー?」と、手を伸ばす前に。
ギルが首を振りながら「お前は邪魔にならないから帰って来い」と、菊の首根っこを掴んで布団に入れました。
ピタリ、とイヴァンの動きが止まります。
「…ちなみに、二人ってそういう関係なの?僕、夜は静かに寝たいんだけど」
「…は?」
一瞬なんの事か本気で分からないギルが不機嫌そうに眉を潜め、我関せずと布団に入ります。
菊は、この前フェリシアーノとルートに言われた事を思い出して赤面しました。
「いえ、健全です!至って健全です」
「ふぁ?何言ってんだ…」
そんな二人の様子を黙って見ていたイヴァンでしたが、何も無さそうだと感じたのかあっさりと玄関の方へ布団を引きずって行きました。
「…はぁ、全く」
ギルの疲れたため息に、菊は彼を覗くように見つめました。
「お疲れですか?」
「あー、疲れたぜ…また同居人も増えたしなぁ…」
ギルは、何気無くそう言ったのですが菊はドキリと胸が痛むのを感じました。
やはり迷惑を掛けているのか、負担になっているのでしょうか、
そう思うと、なんだか息が詰まりました。
ギルの寝息が聞こえ始めても、菊は抜け出せない感情に沈んで行くようでした。
夜眠れなかったせいか次の日、講義中に眠たくなり、隣のアルフレッドにたびたび突つかれました。
講義が終わると、彼はからかい半分心配半分で「大丈夫かい、菊?」とまた寝ていた菊の頬に人差し指を当てます。
「…アルフレッド、さん」
「うん?まだ眠そうなんだぞ?
この教科もうすぐテストなんだから、起きてないとダメじゃないか」
「もう爺ですから…若者には着いて行けませんよ」
「なんだい、急に。
…ちゃんと養ってあげるよ」
「養うって…ふふ、もうこれ以上人様に迷惑掛けて生きろと言うのですか…」
アルフレッドは、結構本気で言ったのですが菊はまだ眠いのもあり、彼の熱情にも自分が何を言ってるのかもよく分かりませんでした。
「私は…一人で、生きなきゃいけないんです、逃げなきゃいけないんです…。
私は狡い人間ですから、全て捨てて、放り出して来たんです、だから……誰にも、ギルさんにも、頼ってはいけないんです、なのに」
「……菊っ!!」
急に、アルフレッドが叫ぶように名前を呼びました。菊も、現実に引き戻されたのか驚いたようにアルフレッドを見つめています。
「…心配しなくてもいいんだぞ、俺はヒーローだから、悪い奴は皆倒して、君を守ってあげるからさ!」
「ええ?だれがそんな姫ポジションなのですか、私ですか、アルフレッドさんは確かにカーレースも野球もテニスもパーティも出来そうですが、赤い配管工の人はイタリア人だったと思いますよ」
「えーっ、それは日本のゲームの話だろ!俺はやっぱりPSI使いに成りたいかな!」
そう言いながらも、アルフレッドは心配そうに菊の横顔を眺めています。
そう、「悪い奴」はみんな倒してあげようと彼は目を細めました。
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