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貧乏学生の本田があらわれた!
ギルは走り出した


時は少し遡り、


ギルは、仕事の帰り道でこの前コンビニを案内した青年とばったり出くわしてしまいました。
……偶然、にしては彼はまるで待って居たかのように佇んでいたのですが。

「……」

「やぁ、こんばんはギルベルトくん」

にこり、と笑う彼を見てギルは急いで踵を返して迂回しようと走ります。

「なんで置いてくのかな?」
「嘘だろおまえ…!」

先回りされてしまいます。とんだホラーです。

しかも汗ひとつかいてません。

「僕ね、ちょっとお願いがあって来たんだぁ」
「オコトワリシマス、だ!」

菊がこの前、訪問販売にそう言っていたのを思い出してとっさに叫ぶと、

何故だか、青年の笑みが一瞬消えました。

「……うーん、そうかぁ…じゃあ実力行使されても仕方ないよね?僕が可愛くお願いって言ってるのに、頷かない君がいけないんだよ?」

「それはお願いじゃねぇよ、脅迫だよ…」

「聞いてくれたら同じだよ」

うふふ、と楽しげに笑う彼にギルは肩を落としながらも、話を聞く体制をとりました。
仕方がありませんし、もしかするとまたコンビニとか……

「 僕を、君の家で匿ってくれないかな?」
「おー、なんだそんな……えっ」

誰が、どこに?


「うん?だから、僕がいま追われてるから君の家で身を潜めたいんだよ。お礼は前あげたよ?」

「追われて…?いや、おまえ何言って…」

説明を求めたくてギルは口をパクパクさせましたが、青年は意味ありげに微笑みました。なんだか黒いものが見えます。

「詳しく、知りたいの?」

「いや、要らん……」

背筋が凍るようだった、と後にギルは語りました。
しかし不可解な事は多いです。

帰り道を待ち伏せされたこと、一回会っただけの自分のところに彼が来たこと、そもそも追われている身とは?

「関わりたくねぇぜ…」

果てしなくめんどくさそうな案件ですね。


「まぁ、立ち話もなんだから早く君の家に行こうよ」

そう言いながら、彼は迷わずに歩きだしました。



「俺様まだ良いって言ってねーけど、あとウチにはもう同居人居んだよ!残念だったな!」
「……へぇ、彼女かな?」

至極当たり前の返答であるのに、ギルはなんだか息がし辛く感じました。

「……あいにく、野郎だぜ」
「じゃあ尚更問題ないじゃない?」

スタスタと歩く彼を横目に、ギルは「嘘でも彼女って言っときゃよかった」と頭を抱えました。
そして、アパートに着いた時。

水際の攻防戦の如く、ギルはなんとか青年を撃退する為に走り出すのでした。

「問題ならあるぜ、俺様がお前苦手なんだっつーのバーカバーカ!!」

涙目に成りながら、ギルは叫びました。




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