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貧乏学生の本田があらわれた!
フェリの違和感

「ねぇねぇ、菊は真ん中で寝てよ〜」

フェリシアーノが指し示すのは、男二人の部屋であるのにひとつしかないベッドでした。ホテルとかにあるものより大きな気がします。
男三人でも寝られない事は…

「…?そもそも、何故三人で寝る必要があるのでしょうか…」

「本田、諦めろ」

至極当たり前の疑問でしたが、ルートが首を振り菊の背を摩ります。フェリシアーノも既にベッド上で両手を広げていますので逃げられません。挟み撃ちです。

「ほら〜!菊〜!怖くない!」
「…うっ」

断わり辛い雰囲気に、菊は渋々キングサイズのベッドに横たわりました。満足そうに微笑むフェリシアーノと、すまなそうに目を瞑るルートに挟まれて、菊は狭いとかむさ苦しいとか考えもしましたが、
くすぐったいような、安心するような感覚を覚えました。

いつもギルとは、当たり前ですが同じ部屋で別々の布団で寝ています。

その前は、



「…菊、大丈夫?」
「は、はい…やはり狭いです…」

フェリシアーノの問いに、体制の事かと思って答えた菊でしたが、フェリシアーノの返事が無いので彼の表情を読み取ろうと視線を上げました。
暗い部屋で、色素の薄い目が痛ましいような表情で、此方を見ています。普段のふんわりとした彼とは随分雰囲気が違いました。

「…菊、今日はいっぱい話してくれてありがとう」

「え、は…はい」

戸惑う菊を見て、いつものような笑みを浮かべたフェリシアーノは落ち着いた声音で話し出しました。

「俺もね、実はちょっと変わってて…俺の家ってマ…大っきい会社なんだけど〜、跡継ぎとか色々あって大変だったんだけど〜、…兄ちゃんに全部押し付けて逃げて来たみたいなものだからさ〜…」

「…そうだったのですね」

失礼ながら悩みのなさそうな彼にも、そういった過去があったのだと菊は驚く半分納得もしました。だからこそ、彼らは優しいのだと、

四肢が、重くなる感覚に菊は瞼を閉じました。

『前』は、恐ろしくもあった人肌が今はとても暖かくて、安心出来て…


前、とは?
いつの事だったでしょうか…



……





菊が、規則的な寝息を立て始めたのを確認してルートがフェリシアーノに目線を送りました。

「…いいのか、フェリシアーノ?話してしまって…」
「ん?別にいいよー、だって『大きい会社』の『跡継ぎ問題』だもんね?別に知られても大丈夫だよー」

何かいいたげなルートに、フェリシアーノは嬉しそうに笑いました。諦めたように、ルートが溜息を着きました。

「…お前の事はともかく。問題は本田だな……」

「うん、ちょっと変だよね〜?なんか、時々話の辻褄が合わなくて…」

ギルベルトに拾われる話も、大学生目指して勉強する話も、納得は出来たのですが…まぁ、話がたまたま抜けてしまったのかもしれません。
二人は特に追求せずに、寝ている菊を包むように手を載せました。

「…でもね、ルート。俺さっき逃げ出したって言ったけど…
必要な時には、『会社』を使うつもりだよ」

暗闇の中で、フェリシアーノの表情は菊に見せたことは無い、暗いものでした。


「…そうか、普通どおりに過ごしていればきっと使わずに済む。そうあって欲しいと思ってる…」

ルートの、いつもどおりの対応にフェリシアーノは本当に嬉しそうに笑みを浮かべました。

「…うん、ルートのそういう所好きだよ〜…」

「…やめてくれ」

背を向けてしまったルートですが、これは照れています。間違いなく。


しかし、フェリシアーノはなんだか嫌な予感に苛まれていました。
大学の、アルフレッドにも
菊の話の、違和感にも

兄が少し前から、この街に来ているらしいという話も。







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あきゅろす。
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