貧乏学生の本田があらわれた!
ギルは看取る
「まさかフェリシアーノちゃんと同じ大学だったとはな……」
携帯を切ったギルは、コンビニの駐車場に居ました。やや暗い空の下をおでんを入れたビニール袋を抱えて帰ります。
菊にも、おでんを買おうと思って電話したのですがまさか友人が出るとは思いもよりませんでした。
思ったより、大学生活を楽しんでいるのだなと感じますね。
「学生寮なら安心だな……と、」
かしゃん、と液晶画面の広い端末がアスファルトに転がりました。
逝ったか!?と思いましたが、音的に液晶は大丈夫でしょう、うん。
だいぶ遠くに転がってしまい、取りに行かないとなーとめんどくさそうに歩いていた天罰でしょうか。
黒塗りの車が、
無残にもその液晶画面を粉粉に砕いて行きました。
「ーーーっつ?!!!?!」
この気持ちを、なんて呼ぶのでしょうね?絶望?
アスファルトに四つん這いになりながら、必死に携帯端末の息を確認しますが、息はしていません。できません。
「俺様の****がー!ぐじゃぐしゃじゃねーかぁあ!見えねぇよ!愛があっても見えねぇ!」
…ご臨終です。
しばらく絶望に打ちのめされていたギルでしたが、急に手元が暗くなりました。
「…もしかして、それって君の?」
「うおっ」
気が付きませんでしたが、声をかけられてギルはその男を仰ぐように見上げました。
黒いコートに、黒いマフラー。
それが白い肌を際立たせていました。
男が、愉快そうに笑みを浮かべます。
整ったその顔は、冷たい印象を受けました。
「大変だね」
「てめぇ、さてはあの車の」
「うふっ、運転してたのは僕じゃないよ?………まさか一番くじもう終わってるなんてなー…残念だよ」
ぼそり、と呟いた言葉にギルは耳を疑いました。
「……お前、まさかオタクなのか」
「オタク?…あぁ、そんなに詳しくは無いんだけど、知り合いがね、好きだって言うから」
そうは言いますが、悲しそうな顔をしています。
ギルは、携帯端末には目をつぶって「近くにもあるぜ」と彼におしえてやりました。
確か、菊が目を輝かせてそのクジを見て居たので覚えています。ここは大通りに面しているので客も多いのですが、菊のお気に入りのコンビニはやや中道にひっそりと立っています。
すると、彼は嬉しそうに目を細めました。
「もちろん、案内してくれるよね?」
「ふぁ?」
いや、お前車乗ってきたんじゃないのかよと言いたげなギルの視線に、彼は肩を竦めました。
「あの子たちはダメだよ、僕が外に出るのだけでも渋ってたのに、コンビニ行きたいからなんて知られたら大変だよ。
…それに『あの子』の事忘れて欲しいみたいだしね……」
「あ?」
急に、ひんやりとした空気を感じたのですが彼はふんわりと笑うばかりでギルは少し気味の悪さを彼に覚えました。
「早く行こうよ、僕捕まりたくないから」
見ると、黒塗りの車から女顏の青年がこちらを睨んでいるようでした。どうやら厄介な拾い物をしてしまったようですが、ギルは青年を案内することしました。
ついでに、菊に景品でも持って帰ろうだなんて呑気に考えながら。
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