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貧乏学生の本田があらわれた!
バッシュがお出迎え

「ヴェ、どうしたの菊?」

学生寮に向かう道すがら、菊は懐の携帯電話の振動に気が付き立ち止まりました。
ディスプレイには、ギルの名前が着信を告げています。
電話を取らない菊に、フェリシアーノが首を傾げてから、軽やかに携帯を菊の手から奪いました。

「チャオー!俺だよ!」

「えっ?!」

そして楽しそうにギルの電話に応答しています。
もちろん菊は混乱しましたが、いつもなら直ぐ叱りそうなルートが訳知り顏で頷いています。

「……うん、そうだよー!……はーい、大丈夫だよ〜!ちゃんとパンツ履いてる!……じゃあねー!」
「何の話ですか!?ギルさんに何を聞かれたんですか!ってルートさんはなんで止めないんですかぁあぁああ!?」

「……む、すまない」

何故かまじまじと菊を観察していたルートが、空返事を返しました。状況が掴めない菊は、楽しげなフェリシアーノから通話終了した携帯を返してもらい、詰め寄ります。

「フェリシアーノ君っ?!」

「わ、菊って近くで見るとちっちゃくて可愛いね〜!」

「違います、まだ伸びます、……いえ、その、電話!」

「…本田、心配するな。フェリシアーノはちゃんと連絡していた」

ルートが、菊を宥めるように肩を叩きました。フェリシアーノが得意げに胸を叩きます。

「そうだよ!俺、ちゃんと連絡したのであります!」
「今の会話でその回答を信じる根拠が、ありますか?」


友人の自信ありげな様子に、げんなりしながら菊は早急にギルに報告のメールを打ちました。
なんとか、取り繕えたでしょうか…

「あ、ヤバイ」

「えっ?」


フェリシアーノの声のトーンが明らかに下がります。理由は直ぐに知れました。

「貴様ら、外出時間を守る気はさらさらないのであるな?」

寮長のバッシュが、青筋を立てて学生寮の入り口で仁王立ちしています。問題の多いらしい生徒を纏めるだけあり、彼の気苦労はおよそ察しが尽きません。

しかし、菊の姿を認めるとバッシュの表情は訝しむようなものに変わりました。

「…貴様は、部外者だろう?」

「ヴェ!そんな事ないよー!!菊は俺たちの友達だよ〜!」

「すまないバッシュ、これには訳が…」

ルートとフェリシアーノの説得と、今だにやや顔色の優れない菊を見てか、バッシュは呆れたようにそっぽを向きました。

「……認めれないのである。
…だが…貴様らが帰ってきた所を『見ていない』のだ、何も知らない、のである」

「…あ、ありがとうございます、バッシュさん」

菊のお辞儀をチラリと見て、バッシュは学生寮の中に入って行きました。学生寮は5階立ての、そんなに古くはない作りですが独特の生活感があります。

フェリシアーノがニコニコと嬉しそうな顏で、学生寮の扉を開いて待っていました。

「おかえりー!菊ー!俺ん家だよー」

「た、ただいま…?」

戸惑いながら、菊が返事をすると。
花が咲くような笑顔で、フェリシアーノが菊を思いっきり抱き締めました。

ややあって、ルートも腕を回してきます。


「あ、あの」

「菊、いっぱい喋ろうよ〜!いっつも俺ばっか喋っちゃうから、今日は菊の話を聞くよー?
そのあとで、冷蔵庫のジェラート食べよう!!」



「消灯時間はきちんと守れ!フェリシアーノ!!」

姿が見えないバッシュから、お叱りが飛んできました。






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あきゅろす。
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