貧乏学生の本田があらわれた!
菊の不平等条約
「あ、そういえば今日って…菊がジョーンズと焼肉行く日だよね〜」
「うっ、胃もたれが」
「えぇえっ?!まだ何も食べてないじゃん!」
「鎖国します」
午前中の講義も終わり、菊は新聞サークルの集りで空き教室でフェリシアーノ達と作業中です。友人の何気無い一言に菊は作業しながら机に突っ伏しました。話をふったフェリシアーノが心配しながら、ルートに助けを求めます。
「どうしよー!ルート!菊がダンゴムシみたいになっちゃったよ〜!?」
「ダンゴムシか…ふむ、ダンゴムシであれば一定の刺激を与えないようにすれば自然と開くだろう」
「ヴェ、でもなんか…300年くらい開かないような気がするよ〜…」
ルートも作業をしながらの返事なのでややおざなりです。
ちなみに何も作業をしないフェリシアーノですがいつもの事なので誰も何も言いません。
そんな彼ですが、友人が心配なようで一生懸命心を開かせようと努力するのでした。
「ほ、ほら〜!菊、お肉美味しいよ〜?ピッツァのがもっと美味しいけど〜!…はっ、でもパスタも捨てがたい…どうしよールート!」
「食べ放題にすればいいだろう」
「やったぁ!さすがルート、今夜もイタリアンだ〜」
見事に脱線していきましたね。
「ダンゴムシなら……いっそ深海の貝になりたいです、そうしたら」
「Wow!どうしたんだい菊!?そんな格好じゃ日光に当たらないよ!酸素作れないよ?!」
「葉緑素は持ち合わせていません」
いつからいたのでしょう、アルフレッドは丸まった菊の背中からに腕を回して、犬に万歳させるように持ち上げました。
ぶらぶら、と宙で足が空回りするのを菊は虚しく見つめています。
反対に、アルフレッドはとても楽しそうで。フェリシアーノとルートはなんとも言えない表情で二人を眺めました。
「……ところでアルフレッドさん、どうかされたのですか?まだ夕飯にはだいぶ早いですが…」
「いやぁ、楽しみ過ぎて来ちゃったんだぞ!菊ー!」
「……さようですか」
そんな会話をしていると、不意に教室を覗く影が視界を掠めました。なんとなくですが、嫌悪感のような良くない感情の篭った視線でした。
「……」
「ん?どうした、フェリシアーノ?」
「うーん?俺も良くわかんないや〜、可愛い女の子が通った気がしたんだけどねっ!」
フェリシアーノの表情が、あまり見たことのない、例えるなら冷えきった夜のような目だったのでルートは気になってしまいましたが、いつもの彼の返事に呆れながら心なしか安心してしまいました。
「じゃあまた、迎えに来るから!」
「逃げませんよ…」
念入りなアルフレッドに疲れたのか、菊がため息混じりにこぼした言葉に、アルフレッドの笑みが深くなりました。
「そうかい?じゃあ、もし俺との約束破ったら……」
そこで何故か、アルフレッドが菊の腕を引きました。
不意打ちに、菊の身体は軽々とアルフレッドの腕に収まり至近距離から美形に覗きこまれるなんていうご褒美に近い体制になりました。
菊本人の心情はさて置き。
「菊から何か貰おうかな」
「お小遣いなら出ませんよ」
「HAHA、物は要求しないから安心するんだぞ」
穏やかに会話しているように見せかけて、菊はなんとかアルフレッドの腕を解こうとして居ましたが、びくともしません。
こうして、なんだか不平等な約束をしてしまった菊でしたが…
……焼肉じゃ済まなくなりそうな気がして来ましたね?
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