貧乏学生の本田があらわれた!
ギルはのたうち回る
「でーと、デート…」
うぅん、と悩ましげに菊は呟きました。アルフレッドがやや強引だったとはいえ約束は約束です、菊は真面目だったのでバックレるとか仮病とかは思い付きません。
からん、とフォークが落ちる音がして菊は視線をそちらにやりました。
机を挟むようにして、ギルと夕飯をとっていたのですがギルが呆然とこちらを見ています。
「…デート?」
「あ、いえ…多分ご飯の事だと思うのですが…」
「そ、そうかよ…」
明らかに動揺を隠せずに、ギルは手にフォークを突き刺してのたうち回っています。菊は冷静に「手は食べられませんよ」と絆創膏を出してギルの手に張ります。
菊は気付きませんが、ギルの耳は真っ赤になっていました。
落ち着こう、とギルはお茶を飲みました。
「しかしあれだな?!無一文で彼女に奢らせるのは格好つかねぇだろ?!」
「…彼女?いえ、相手は男性ですが…」
「?!?!!」
ぶっ、とレスラーが毒を吹きかけるようにお茶を吹きます。幸い菊は被害なしでした。
ギルが全体的に震えだしました。
「えっ、ちょっ、お前って……なに?そういう感じ?俺様が知らなかっただけ?」
なんだかデジャヴを感じるやり取りですね?
「あぁ…もうすぐお仕事の時間ですよ」
「仕事なんかどうでもいいんだよ!!」
「や、それはあかんで〜」
ひょっこりと、アントーニョがリビングに現れました。
ギルは驚いていないので、多分慣れっこなのです。しかし不法侵入はダメですよ、真似してはいけません。
「最近お前、サボり過ぎやから親分出動してきたで〜」
「チッ」
実に自然に座りだしたアントーニョに、菊は慌てて挨拶をしました。
「お、お初にお目に掛かります…!ギルさんの所でお世話になっている、本田菊と申します…」
「うん、知っとるで!菊ちゃんは寝とったけどな〜、あーやっぱかわええ!!
なぁなぁ、ウチに来ん?養ったるで」
「……考えておきます」
「わ、嬉しいわぁ」
遠回しに断っているのですが、アントーニョにはもちろん伝わりません。にこにこと機嫌良さそうに、彼は菊を眺めていました。
「…楽園やんなぁ」
「ほら、仕事行くんだろーがよ!!」
荒々しく、ギルはアントーニョを引っ張ると菊に「鍵閉めて寝ろよ」と言って出掛けて行きます。
「あっ、お見送りを…」
「菊ちゃーん!今度仕事場来たってー!フランシスも喜ぶわ〜!」
少し遠くで、アントーニョが明るく手を振っていました。菊もお辞儀で返します。
そういえば、ギルさんの職場に行ったこと無いなと菊は思いました。
体調も大分戻ってきましたし、アルバイトをしようかと思っていたところです。
菊は、今度ギルさんに頼んでアルバイトさせて貰いましょうと考えました。
ホストクラブやっているとは、全く思わない訳ですが。
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