オトンとオカンと
寝ようよ
「政宗さ…、梵天丸様。」
「呼び捨てでいい、なんだ?」
「お話をお聞かせ願います」
***
梵天丸の話によると、突然この部屋に瞬間移動したとの事である。弁丸もよく覚えてないらしいが、そうらしい。
「こんな情報じゃ役にたたないな、佐助?」
「………」
佐助と小十郎は何やら思案中で、チラチラとお互いを見合っている。
あぁ、またか。
「…私は彼らを寝かせたいから、君らはリビングへ行ってて」
そう言ってやると、二人は返事をして移動して行く。昔からそうだった。
彼らの間には、何か私にはないものが流れていて。私には知らせたくない何かで、まぁ嫌ではないけど、寂しくもある。
「…鵺子は寝ないのかよ」
梵天丸が、目をこすりながら布団から顔を出す。弁丸は既に寝息を立てている。
「…寝ませんよ、君らを寝かせないといけませんから」
「…なんで、鵺子は敬語なんだ…?」
眠たそうに呟いた梵天丸に、布団を被せてやって規則的に軽く布団を叩く。
「…君らも立派な人ですから、一個人として敬意を払ってるんですよ」
「…じゃあ、敬称をつけないのは…?」
「それは、ほら、君らはまだまだ子供だからですよ」
私の答えがおかしかったのか、梵天丸は喉を鳴らして笑った。
「矛盾、してる…」
「そうですね、でも…私はそれが最善だと思ったので」
「……」
おや、答えが返ってこない。
これは寝たな、と立ち上がろうとすると双方から手が伸びて阻止されてしまった。
「…ははうぇ…」
弁丸が体をよじりながら、私のズボンの裾を掴んでいる。早く返してあげないと、と私は弁丸を撫でてそう思ったのだが。
「……」
狸寝入りらしい梵天丸は、私の手首を掴んで黙り込んでいる。
「梵天丸、離して下さい」
「……嫌だ」
きゅう、と力が籠もるその小さな手を無理やり振り解くと、梵天丸は苦しげな顔をしたが。
「…掴んでいては、撫でれませんから」
「…っ!」
手触りのいい、その髪をすくように撫でてやるとかすかに頬を上気させて、彼は瞼を閉じた。
次第に、規則正しい寝息が聞こえてくる。
結局、彼らは寝ても私を掴んだままだったのだが。
[*前へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!