オトンとオカンと
話をしよう
「鵺子、てめぇ誰の子孕みやがった!」
「小十郎、ちょっと出てって貰えるかな」
玄関先から叫ぶ小十郎に、私はため息をついた。やっと今彼らを寝かせた所だったのに。
***
眠たそうに、梵天丸が体を起こした途端にバサバサと小十郎の手から袋が床に落ちた。
「ま、政宗様…っ!」
「…誰、」
じと、と小十郎を睨みつけた梵天丸を見つめて小十郎は床に崩れ落ちた。泣いてる、のかな。
梵天丸も流石に気になったのか、慌てて起き上がり小十郎の背をさする。
「泣くなよ!俺が泣かしたのか?なぁ鵺子!」
「鵺子さん、と言って下さい梵天丸、さんはい!」
「…鵺子、昼寝はもう良いから話をさせろよ…」
「駄目です、君くらいの頃は体力の消費量が多いので昼寝を挟まないと、」
「体なら鍛えてるっ!いいから、弁丸も起こせっ」
弁丸は、佐助にベッタリとくっついたまま眠っていたのだが梵天丸がげしっ、と軽く蹴り上げたのでまた弁丸は泣き出しそうな顔をした。
「ちょ、旦那泣かすなよ独眼竜っ!」
「ハッ、情けないな!この位で泣くような奴が天下を、」
ぶにっ、と。
私は梵天丸の頬を指でつまんだ。
「いっ…!」
「……、蹴るのは良くない」
「アンタがつねるのはどうなんだよ!」
「そうだね、梵天丸。いいよ叩いても」
「……女を殴る趣味はねぇよ」
こんなに小さいのに、彼は聡い。私の顔色が変わった事にもすぐに気が付いたらしく、話を変えようと視線をさまよわせている。
思わず、手を伸ばして頭を撫でてしまう。最初はびくりと震えた梵天丸だったけれど、甘んじて受けてくれる辺りやっぱり空気が読める子なんだ。
「……人に、撫でられるのは久しぶりだ…」
「…ん?何か言いましたか、梵天丸」
そのやりとりに、小十郎が目を細めて笑う。佐助は弁丸をあやしながら「意外だわ」と呟いた。
「てっきり右目の旦那の事だから、独眼竜に手を出された時点でどうにかすると思ってたよ」
「…あの頃の政宗様は、母であった者に酷く当たられておられた頃だからな、」
だからこそ、子供らしからぬ気遣いをしたり。鵺子の手を受け入れたりするのだが。
「…代わりには成れないからな」
あくまでも、家臣である小十郎では。母親代わりには成れない。
しかし、この状況にはいくつか疑問がある。
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