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オトンとオカンと
願わくばみんなと

竹千代は妙な不快感に身を震わせていた。


有名な神社の近くのカフェで小休止した鵺子は、気晴らしに歩きましょうと神社に向かい歩いていた。
昼中のはずなのに、空気はまるでビリビリと張り詰めていて。


そんな中で青白い顔をして、竹千代はグルグルと思考の迷路に迷っていた。


主に悩みの種は、もちろん彼女のこと。

もはや親代わりでもある鵺子が、自分に対して態度を変えてしまった事。それと消えてしまった佐吉の事。
おそらく、儂は無関係ではないのだ。


「くそっ…忠勝が居れば…」

だから、なんだというのだ。

忠勝は強い。
しかし佐吉を取り戻す事も、
鵺子を笑顔にしてやる事もできない。


幼いながらに、竹千代は自分の無力さを呪って歯を食いしばった。


「強く、ならなくては…」



「竹千代、大丈夫か?」
「竹千代殿、顔色が優れぬが…」


人の気持ちに聡い、梵天丸と弁丸が両脇から竹千代を支えた。ふたりもまた、不安を感じていた。




しかしふたりに話すつもりはなく、竹千代は頼りない笑みを浮かべて首を振り、鵺子たちの後を追うように石段を登って行く。

ざわざわ、と竹林が騒ぎ立てる。



「強くならねば…」


ツヨク……


「忠勝のように…」


ダレヨリモ……


「守れるように…」





そして、


『独り』になるのか




「え………」



葉のざわめきの中に。
はっきりと声が聞こえた。


それは自分の声のはずなのに酷く落ち着きのある。朗らかなようでいて、底のないよどみの様に暗い。


独りに。
そう声は言った。


それは嫌だ。独りになんてなりたくない。むしろそうだ、誰かと繋がっていたい。それこそが、強さになる。

それは、なんという?



「儂は、儂は……絆が欲しい…」


ぐにゃり、と世界が歪む。
鵺子が、驚いたように此方を振り返る。そんな事に喜びを感じてしまう儂は、なんて浅はかなのか。

思わす手を伸ばし、竹千代は自分が石段から転がり落ちて行くのを感じていた。


「竹千代!!」

悲鳴のような鵺子の声に、竹千代は顔を歪めて叫んだ。



「独りに…しないでくれ…っ!!」




守るための強さを、
平和のための強さを、
突き詰めていった儂は



誰と、繋がっていられた?






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あきゅろす。
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