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オトンとオカンと
立てばいい

竹千代は、大人達の背中を追いながら考えを巡らしていた。



――――こうして未来の世界を眺めていると不思議な気分になる。

行く人は見慣れぬ衣服に身を包み、鵺子曰わく『カメラ』というもので風景を映したり、儂らには到底理解出来ぬ技術がこの世には当たり前にある。




「ところで佐吉、先ほどからやけに静かだが……佐吉?」



隣に居たはずの佐吉がいない。


後ろを振り返ると、なにやら観光用の看板らしい説明書きを鬼気迫る表情で読みふけっている。


ちり、と脳の隅で。
嫌な音がした。




慌てて佐吉に駆け寄ると、その細くて壊れてしまいそうな体が震えて居るのが分かった。


「…っ佐吉」

「ひ、でよし…様…が…死ん…?」


何を読んでしまったのか、とっさに理解して佐吉と看板を引き離して手を引いた。

「佐吉、しっかりしろ!儂らは今未来に居るのだから、この時代には儂らは勿論…お前の言う秀吉殿とて」

「有り得ぬ!!」



佐吉に手を払われて、竹千代はバランスを崩し転びそうになったが、さすがに異変に気が付いたらしい鵺子が支えに入った。

「竹千代!……佐吉、いきなりどうし…」




「このような世界は嘘だ…!あの方が、居ない世になど、私の生きる意味…っが」



突然、倒れ込んだ佐吉を慌てて抱きかかえる鵺子。
佐吉の背後に立った小十郎がなにかしらしたらしい。


ちなみに梵天丸と弁丸が怯えた目をしてその様子を見ていた。その二人を宥めながら佐助は

「旦那、それはギリアウトだわ」

と、遠い目をして呟いたのだった。


*****



小十郎は内心『やっぱりな』とため息をつく。


京都は良くも悪くも日の本の歴史の中で中心にあった。
それが、後に名を残す彼らにとって無関係であるはずない。



「…なんの因果だ」


これを仕組んだヤツが居るとするなら。性格の悪いヤツに違いない。





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