[携帯モード] [URL送信]

オトンとオカンと
転んだらまた、



入場料を払って、清水寺に入った私たちは眼下の京の町に歓喜の声を上げた。

「ビルあるけど、寺も多いですね!ね、慶次さ…」

「へ、あ、うん!」


声を掛けるまで、慶次は目を見張っていた。信じられない、と言うような表情は、絶望にも見えた気がしたのだが。

気のせいだったろうか。




◇◆◇◆◇


ご本尊のある本堂の壁のそばで、慶次はひっそりと落ち込んでいた。

視界の端で、小さい独眼竜が柵を超えようとして鵺子に叱られていた。



「…どうした?」

「いやぁ、竜の右目に心配されるなんてねぇ」


小十郎が、いつの間にかそこに居て慶次は苦笑いしてしまった。これが戦国なら、死んでる。
改めて、ここは現代なんだと知らしめられる。



「…いや、さ。俺も実は此処には初めて来たんだよ……京の町を見下ろしたりなんてしたらさぁ、分かっちまうから」

「…何を」


くしゃり、と情けない顔をして。慶次は肩をすくめた。


「大好きだったんだ、本当に…。ばあちゃんが一人で切り盛りしてる団子屋があってね、それに喜助の嫁さんに五人目の娘が生まれてさ、あとは綺麗な芸者の姉さん達……」


言わんとしている事を察して、小十郎は押し黙ってうつむいた。


「…みんな、もう居ないんだ」




「慶次さん?どうしました?」

日陰で休んで居ると思ったのか、鵺子が様子を見にやってきた。泣きそうになっていた慶次は、無理矢理に笑って「何でもないよ」と日の当たる場所に出る。

慶次の返事に安心したのか、鵺子は柔らかく笑って「来て下さい」と手招きする。


「すごく、綺麗ですよ」


「……あぁ、そうだねぇ…」


「昔の建物と、今の建物が混じり合ってるんです」



今と、昔と。


言われて、ふと。今の状況を思い起こして、似ているなと思う。

幼い武将たち、現代、急に成長する…


「まさか、ねぇ」




京都がいわゆる、パワースポット的な奴だったとしたら?


なんて、



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!