オトンとオカンと
人それぞれの恋
眠りこける鵺子を抱え込みながら、佐助は疲れたように壁にもたれかかる。
「難儀だね、真田の忍さんもさ」
「…アンタさ、いつから起きてたわけ」
「さぁ、いつからだろうねぇ」
ソファーで寝ていたはずの慶次が意味深けに笑い、体を起こす。何か含むような笑みに違和感を覚えながら佐助は真っ暗な部屋で目を凝らした。
「幼なじみだって聞いてたけど、こりゃ俺にもチャンスはあるんじゃないかい?」
「……妄想すんのは勝手だけどさぁ…面白半分でちょっかい出すのだけは辞めな」
「ちゃんと本気だよ?」
どうだかね、と佐助は目を細めてから鵺子を抱えて立ち上がりベッドに戻した。慶次が不思議そうに首をすくめるので、またため息をつきながら話す。
「アンタさ、分かる?戦国じゃ超人的な『俺様』なら、良かったのにって切望する気持ちをさ」
「…え?どうしたんだい、いきなり」
「頭じゃ分かってるんだよ、もう俺様は普通の奴で『出来ない』事ばっかでさ…嫌になるよ」
ベッドに横たえた幼なじみは、もぞもぞと寝やすい体勢を探している。
クス、と笑ってしまってから。慶次がその様子をニコニコと見守っている事に気がついて、思わず顔をしかめた。
「…あのさー、そんな緩んだ顔見せないでよイラつく」
「恋してるねぇ」
なんでアンタが嬉しそうなんだよ、と思わずこぼしてしまった。
「…そんな、綺麗なもんじゃないよ」
そう、俺の気持ちは『恋』なんてそんな甘酸っぱいものじゃない。
「いいんだよ、恋の形は人それぞれだからさ!」
人の話を聞け。
まぁ、話す気なんてないが。
なぁ前田の風来坊。
アンタは取り返しのつかない事をした事があるか?
その原因は自分で、
被害を被ったのが鵺子だったとしたら。
あぁもう、
俺様サイテーだわ。
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